研究課題/領域番号 |
19K02009
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高橋 賢 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50282439)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メゾ管理会計 |
研究実績の概要 |
本研究の今年度の目的は,産業クラスターを会計対象とした管理会計,すなわちメゾ管理会計の構築について考察することである。そのために,メゾレベルの会計についてマクロからのアプローチとミクロからのアプローチから検討した。そして,メゾ管理会計の構築の可能性について探った。マクロ・アプローチのメゾ会計は,マクロ会計で用いられる技法をメゾレベルにダウンサイジングしたものである。具体的には,マクロ会計で行われている産業連関表や投入産出表などを,対象を国全体から地域にダウンサイジングして作成する。木質系バイオマス事業の集計表がこの例である。一方,ミクロ・アプローチのメゾ会計は,ミクロ会計の機能をメゾレベルの会計対象までに拡張したものである。たとえば,マネジメント・コントロールを一組織だけの問題ではなく組織間の問題にまで拡張した組織間マネジメント・コントロールも,メゾ会計のひとつである。また,サプライチェーン全体で作成するBSCも,メゾ会計の例である。 この2つのアプローチからのメゾ会計は,その特質から守備範囲が異なる。マクロ・アプローチのメゾ会計は,どちらかというと会計対象外部のステイクホルダーへの情報提供機能が強い。マクロ会計由来で会計システムが設計されており,会計対象の総体としての経済効果の測定が会計の主たる機能である。測定された経済効果によって,政策評価などが行われる。 一方,ミクロ・アプローチのメゾ会計は,会計対象内部のステイクホルダーへの情報提供機能が強い。産業クラスターであれば,参加企業の業績管理,原価管理,協働によるイノベーション創出のモニタリングなどである。これらは,組織間マネジメント・コントロールや,サプライチェーンBSCなどの,組織の枠を越えた管理ツールによって行われる。 以上のようなメゾレベルの管理会計構築のアプローチの違いを明確にできたことが,本研究の実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で停滞していた調査活動が再開できたため,研究が進展した。その中でも,メゾ管理会計の設計理念としてマクロアプローチとミクロアプローチという2つのアプローチを発見できたことは,調査にコロナ禍での制約がなくなった今後の研究の進展にとって大きな推進力になるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの成果で示した設計概念,つまりミクロアプローチとマクロアプローチという設計概念を元に,今年度は実装モデルの構築を考えなければならない。加えて,ここで検討したようなメゾ管理会計のシステムを誰が設計し,誰が運用するか,という問題も明確にしなければならない。 このために,マクロアプローチでメゾ管理会計が(無意識的に)行われているような,たとえば木質系バイオマス事業や,ミクロアプローチでメゾ管理会計が(無意識的に)構築されているような自動車産業などの組織間マネジメント・コントロールについての実態調査を行う必要がある。それらを抽象化・一般化することでモデル化をし,地域ネットワーク組織のマネジメントに資するメゾ管理会計のモデルの構築を行いたい。 とりわけ,ネットワークを構築している組織におけるキャパシティの相互利活用の事例を研究し,いかにしてアイドルキャパシティの有効活用ができているのかということの実態を明らかにし,そのモデル化を図ることで,人口減少社会でのメゾレベルのキャパシティマネジメントへの処方箋を作成することを狙っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で対面による実地調査が中断していた。その対面による実地調査を再開するために必要である。
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