研究実績の概要 |
本研究は,わが国企業の実務に広く普及し,継続的に利用され定着化した管理会計技法と,十分な普及がみられず継続的な利用にも至らず定着化していない技法との相違はどこにあるのかという問題意識のもと,特に新しい管理会計技法の普及ならびに継続的利用を通じた定着化に影響を与える要因を明らかにすることを目的としている。 平成31年(令和元)年度の研究においては,管理会計技法の普及/定着化に対する影響要因についての理論的枠組みを構築するため,既存の理論研究のサーベイを行い,①技法そのものがもつ技術的特徴,②組織内部の環境要因,③外的環境要因・制度的要因からなる分析枠組みを構想した。 そして,新旧の管理会計技法の導入実態と導入に対する影響要因を明らかにするため,上記枠組みにもとづき,東京証券取引所第一部上場企業を対象にしたアンケート調査(「わが国企業における管理会計手法の普及と定着化に関する質問調査」)を実施した。調査の概要は,東京証券取引所第一部上場企業2,153社を対象に,管理会計に対して中心的な関わりをもつと思われる経営企画部門や経理財務部門等の担当役員・部長の方,ならびに代表取締役の方々に令和2年3月上旬に質問票を郵送し,111通の回答を得ている(回収率5.16%)。 また,研究代表者が以前行った管理会計技法の導入実態調査に回答いただいた企業数社に対して追跡調査としてインタビュー調査を行い,管理会計技法の導入実態についてより詳細な知見を得ることができた。調査を行った企業の中には,理論ベースの管理会計技法の導入とは異なり,古くから独自の管理上の必要性に適切に応えるべく優れた実務を生み出し育み根付かせているところがあることが明らかとなった(この研究成果については,『産業経理』Vol. 80, No. 2, 2020年7月に掲載予定である)。
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