研究課題/領域番号 |
19K02014
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
繁本 知宏 香川大学, 経済学部, 准教授 (90756842)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 信用力 / 格付 / 財務指標 / 意思決定有用性 / テキスト分析 |
研究実績の概要 |
補助事業期間1年目である令和元年度は、主として、信用力評価の鍵となる財務関連の語の抽出に取り組んできた。具体的には、まず、日本で事業展開している格付会社5社(格付投資情報センター、日本格付研究所、ムーディーズ、スタンダード&プアーズ、フィッチ)が公表している格付リリースを研究実施者が手作業で収集し、テキスト分析用のソフトウェアが読み込める形にデータを整形する作業を行った。 次に、データ全体の特徴を俯瞰するため、信用力評価に関連する語の出現頻度の分析や、そうした語について共起の程度(出現パターンの類似度)が高い組み合わせを特定する分析を行った。さらに、データ全体をいくつかの視点(例えば信用力の高低や変化の方向性)から細分化し、それぞれにみられる特徴を細かく把握する作業を進めた。 加えて、日本語を対象とするテキスト分析は形態素解析(一連の文章を語や句といった単位に分割する処理)の難度が高いこともあって、テキスト分析を用いた研究は語の区切りが明確な言語、とりわけ英語を素材とした研究が大きく先行している。こうした実態を踏まえ、本研究が貢献を企図する財務会計およびファイナンスの分野における、テキスト分析を用いた海外の先行研究を1年間で約80本ほど追加レビューした。これによって、研究対象や研究方法などについて世界的な方向性を再確認すると同時に、本研究が埋めようとしているリサーチギャップの残存を改めて認識した。また、世界各国から研究者が集まり、最先端の研究成果が数多く報告・討論される米国会計学会の年次大会に参加してテキスト分析をテーマに掲げる複数のセッションに出席し、最新の研究潮流をリサーチしてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度に計画していた事項のうち、最大の課題と位置付けていた中間報告としての論文公表が未完に終わった。その大きな理由は、先行研究の追加レビューを踏まえ、サンプル数を大幅に増やしたことにある。その結果、データ整形に多大な追加時間を費やすこととなり、作成中の論文の修正作業も後ずれした。他方、論文公表以外の令和元年度の実施予定事項は、上記の追加サンプルにかかる作業も含め、おおむね完了した。以上から「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは令和元年度に予定していた論文公表を早急に行う。その目途がつき次第、研究実施計画において令和2年度の実施事項と位置付けている課題に取り組んでいく。ところで、令和2年度終盤以降、世界的な新型コロナ感染拡大に伴う経済活動の停滞懸念が深刻化していることに伴い、とりわけ外資系格付会社が格下げを相次いで発表している。本研究のサンプルは入手上の制約から景気拡大局面に発表された格付リリースに限定されており、格下げサンプルが少ないことが弱点であると認識しているが、令和2年度に発表された格付リリースをサンプルに追加するか否かは慎重に検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は2つ。1つ目は、購入を予定していたデータの見積りをとったところ、計画策定時の想定以上に高額であった。そこで一部データの購入を見送った結果、当年度の支出額が計画値を下回った。2つ目は、航空機による海外出張に際し、所属機関の規定を下回る座席クラスを早期割引運賃で利用した結果、当年度の支出額が計画値を下回った。令和2年度は新型コロナの影響により出張が計画通りに実施できない公算が大きいことから、その出張分の予算と令和元年度の未使用額とを合わせて、購入を見送ったデータの購入費に充てたいと考えている。
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