研究課題/領域番号 |
19K02015
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高橋 隆幸 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (50326071)
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研究分担者 |
野間 幹晴 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80347286)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 税務会計 / 租税法 / 税制改正 / 交際費等 |
研究実績の概要 |
私たちの研究テーマは、「交際費等損金不算入制度の実証的検証」です。研究対象である交際費等損金不算入制度とは、企業の冗費・濫費の抑制による自己資本の充実や、公正な取引慣行の確立を目的として、法人の支出する交際費等を法人税の課税所得の算定において損金不算入とする制度です。この制度は、昭和29年度改正による租税特別措置として導入されて以来、様々な手直しを加えられながらも、数次の適用期限延長を経て現在に至っています。特に昭和57年度改正以降は、資本金が一定額以上の大企業にとっては交際費等の全額が損金不算入となっており、企業の交際費支出を抑制してきたものと思われます。しかし、平成18年度税制改正および平成26年度税制改正においては、企業の交際費等のうち飲食費について、その支出を促すための改正が行われました。これらの税制改正は、企業の交際費等の支出を促して、経済の活性化を図ることを目的としていました。ところが令和2年度税制改正においては、このうち平成26年度改正については、政策効果が薄いとして見直しが行われました。私たちの研究は、実証分析によって、これらの税制改正が企業の交際費支出に与えた影響を分析することで、税制改正の政策効果を明らかにしようと試みています。実証分析前の予想では、交際費等損金不算入制度によって企業の交際費支出額は抑制されていたはずであり、平成18年度改正及び平成26年度改正によって、税制が一部とはいえ緩和されたのですから、企業は交際費額を増やすと予想しました。またその影響は、税負担の重い納税をしている企業の方が、赤字企業などの納税していない企業よりも大きいと予想しました。実証分析の結果、平成18年度改正は企業交際費を増やす影響があったことを確認したが、平成26年度改正にはその影響が検出されませんでした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度(令和元年度)は、3年間の研究期間の初年度でした。先行研究を調査しましたが、主要な学術誌において、交際費等損金不算入制度の政策効果を分析した先行研究を発見することができませんでした。しかし、アメリカの先行研究では、交際費を含むより広い概念であるPerkに関する先行研究の蓄積があります。Perkとは、交際費だけでなく、旅費、海外研修費、取締役会費、事務管理費、通信費、社用車・運転手、会議費などを含む広い概念です。アメリカの学術誌におけるPerkに関する研究は、企業の無駄遣い(冗費)としてのPerkを、如何に抑制するかの観点から、会計ディスクロージャーの強化やコーポレート・ガバナンスの問題として議論を展開しており、税制の問題としては議論されていません。私たちは、これらのアメリカの先行研究における実証モデルを参考にして、実証分析を行い、税制改正の影響を明らかにしました。ここまでの進捗状況は当初の予定通りです。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は、平成18年度税制改正と平成26年度税制改正が企業の交際費支出に与えた影響を、実証分析によって明らかにしました。 令和2年度には、この研究成果を、令和2年9月に開催される「日本会計研究学会・第79回大会(北海道大学・北星学園大学)」において報告することが決まっています。報告後にも更なる見直しを行って、論文を学術誌に投稿することを考えています。また、令和3年度に向けて、次の研究の準備を開始する予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年3月に予定していた研究会(日本会計研究学会特別委員会)に参加するための旅費を支出する予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で研究会の開催が急きょ中止となったために、計画が狂って使用額が余ってしまいました。翌年度に使用します。
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