研究課題/領域番号 |
19K02023
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
石津 寿惠 明治大学, 経営学部, 専任教授 (70337004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 補助金 / 契約債務 / 非営利組織 / 契約法 / 負担付贈与 |
研究実績の概要 |
本研究は、組織形態(営利法人、公的組織、民間非営利法人及び各非営利法人組織形態内)によって補助金の会計的取扱いが異なる原因について、これまで各組織形態の設立経緯や果たす役割が異なるからだという一般的な説明にとどまっている点を課題とし、法律的(民法、補助金適正化法、行政法、財政法)な見地、会計的概念(収益、負債、純資産)の見地、及び利害関係者(所轄庁、組織経営層、資源提供者、業界関係者等)の意向という多角的側面から検討することにより、補助金の本質を解明しようとするものである。 研究2年度目にあたる本年度においては、文献研研究と内外の現地訪問によるヒアリング・意見交換等を予定していた。このうちヒアリング・意見交換等については、コロナ禍の影響により現地訪問ができなかったため、可能な範囲でZoomによる対応を重ねた。また。文研研究については主に補助金に関わる契約法の詳細や会計概念を中心として研究を深めた。 オンラインで行われた日本会計研究学会、日本簿記学会、日本社会関連会計学会、非営利法人研究学会などに参加し、当研究領域について多くの知見を得ることができた。 これまでの研究成果の一部についてまとめた研究論文4本が、以下のように学術誌・学術書に掲載された。石津寿惠(2021)「国庫補助金の会計―受領側及び提供側の視点を踏まえて―」『経営論集』第68巻第1号。石津寿惠(2021)「補助金の会計処理―負担付贈与の視点を含めて―」「社会関連会計研究」第32号。石津寿惠(2021)「第13章 先行者としての米国―医療福祉サービス提供主体の財務情報公開と日本への示唆」出口正之、藤井秀樹編著『会計学と人類学のトランスフォーマティブ研究』清水弘文堂書房。石津寿惠(2021)「第16章 米国における公会計制度の展開」山浦久司編著『地方公共団体の公会計制度改革』税務経理協会。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、当初の研究計画では文研研究、国内のヒアリング調査・意見交換、英国へのヒアリング調査・意見交換、財務分析のためのデータ入力、研究発表を行うこととしていた。 このうち文研研究は新たに米国財務会計基準審議会(FASB)のASCデータベースを活用することができるようになったので予想より効率的に広範な情報の入手ができた。その一方、コロナ禍により国内外のヒアリング等については現地訪問ができず、また学会や研究会への現地に赴いての参加はできなかった(もしくは参集型での開催は行われなかった)。このため可能な範囲でのZoom対応となり、必ずしも十分に遂行できたとは言えなかった。また、財務分析のためのデータ入力についてはやはりコロナ禍により補助者に依頼することができなかったため、必ずしも十分に進捗したとは言えなかった。 上記のように限られた活動ではあったが、充実した文研研究等により、「研究実績の概要」に記載のとおり、4本の学術論文(レフェリー制のある学会誌を含む)を公刊することができた。この点においては、当初の計画を大幅に上回る進捗ということができる。 したがって総合的に判断すると、「おおむね順調に進展している」ということができる。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」に記載のとおり、コロナ禍の影響により本年度に予定していた国内外の現地訪問によるヒアリング・意見交換、研究補助者を活用したデータ入力については必ずしも芳しい進捗状況とは言えなかった。したがって、まず来年度においては、本年度に遅れてしまった部分について(コロナの制約の許す限り)早急に取り組むこととする。 また、当初計画において来年度は、営利企業、公的組織、民間非営利法人の会計処理・基準について国内外の比較を中心に行うことを計画していた。これらの領域については、すでに前倒しで研究が進んでいる部分もある(公益法人、社会福祉法人、独立行政法人等)が、遅れている部分(地方公共団体、医療法人等)ついてはそこを補い、研究領域全体の足並みをそろえるようにする。また、公的組織については、本年度において研究の足掛かりを得ることができたので、来年度においては対象を「国」に広げて取り組むこととする。 また、補助金を負債、収益、純資産のそれぞれに組み替えた場合のシュミレーションについては、特徴的な組織体をピックアップして遂行する。 なお、社会環境が許せば、当初の予定通り海外調査(英国、米国)も実行したい。しかしながら、コロナ禍により現地訪問ができなかった場合には、可能な限りZoomで補うとともに、文献調査の範囲を広げること等により、綿密な国際比較を含めた研究となるよう努めることとする。また、研究成果の学会報告については、前年度すでにに行ったが、ブラッシュアップしたものを報告すべく、翌年度報告のための準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で国内外の訪問調査ができなかった。また、研究補助者にデータ入力を依頼する予定だったが同様の理由により行うことができなかった。実行できなかった研究領域を文献購入による文献・資料調査で補ったが、翌年度使用額が生じてしまった。
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