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2022 年度 実施状況報告書

開示情報を利用した内部統制システムに係る企業認知の可視化と情報開示行動の分析

研究課題

研究課題/領域番号 19K02027
研究機関同志社女子大学

研究代表者

記虎 優子  同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (50369675)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード内部統制システム / 株主総会 / 適時開示 / 会社法 / 計量テキスト分析 / 内容分析 / 企業の情報開示 / 外部報告
研究実績の概要

①「企業の情報開示」を分析視点として位置付けた研究では、過年度の研究の成果を踏まえて、会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針(以下、基本方針と呼ぶ。)に表象された内部統制システムに対する企業の認知を具体的に解明して定量化する方法をさらに改善した。その上で、②「企業の情報開示」を分析対象として位置付けて研究を行った。
②「企業の情報開示」を分析対象として位置付けた研究では、決算発表に着目して、内部統制システムの構築に際する企業の積極性と財務報告志向が、他の企業に先んじてより早いタイミングで報告が行われているかどうかという観点からみた決算発表の適時性に相乗的に寄与することを実証的に示した(記虎, 2022)。
しかし、他の企業の報告日との兼ね合いからみてより分散したタイミングで報告が行われているかどうかという観点からも、報告の適時性を捉える必要がある。なぜなら、もし多くの企業が同じ日に報告を行ってしまうと情報利用者の情報を得る機会が阻害されたり情報オーバーロードが生じたりすることなどが危惧されるので、情報の円滑な伝播のためには報告日の分散を図ることが必要であるためである。そこで、株主総会に着目して、報告の実際のタイミングは一意に決定せざるを得ないことを踏まえて、より早いタイミングとより分散したタイミングの両方の両方の観点から複合的に総会の開催時期の適時性を捉えた。その上で、株主総会は決算の確定を前提として通例開催されることから,決算の早期確定と内部統制システムの構築に際する企業の透明性志向がこれらの両方の観点から複合的にみた総会開催時期の適時性に相乗的に寄与することを実証的に示した(記虎, 2023)。
報告の適時性に相乗的に影響を及ぼす内部統制に係る企業特性や報告の適時性に内部統制と相乗的に寄与する要因を解明したことが、本年度の研究の成果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、「企業の情報開示」を分析対象であると同時に分析視点としても位置付けている。本研究の第一の目的は、①「企業の情報開示」を分析視点として位置付けて、企業が開示した情報を利用して企業が内部統制システムについてどのように考えているのかといった、(目に見えない)内部統制システムに対する企業の認知を定量的に可視化することである。そして、本研究の第二の目的は、②「企業の情報開示」を分析対象として位置付けて、内部統制システムに対する企業の認知との関連において企業の情報開示行動を分析することである。
本研究の2つの目的を踏まえて、本年度においては②を目的とする「企業の情報開示」を分析対象として位置付けた研究を中心に行い、記虎(2022, 2023)を公表した。これらの拙稿では、報告の適時性に相乗的に影響を及ぼす要因を具体的に解明している。両方の要因が揃うと報告の適時性を決定付ける度合いが相対的に大きくなるという点で、こうした要因の重要性は高いため、得られた研究成果は有益である。
①を目的とする「企業の情報開示」を分析視点として位置付けた研究については、すでに過年度において、基本方針のテキスト型データに対して計量テキスト分析を行うことにより、内部統制システムに対する企業の認知を定量的に可視化した。本年度においては、内部統制システムの構築に際して企業が財務報告を重視していることが表象されているとみることのできる言及が基本方針の「どこで」出現しているのかや、言及が基本方針の中で「いつから」出現するようになったのかに着目することで、企業の財務報告志向の定量化の方法をさらに改善した。
以上のとおり、本年度においては研究成果を公表するとともに将来の研究に向けて内部統制システムに対する企業の認知を定量化する方法を改善することができたので、研究はおおむね順調に進展していると判断している。

今後の研究の推進方策

本研究の先述の2つの目的を踏まえて、本年度には既述の②を目的とする「企業の情報開示」を分析対象として位置付けた研究を中心に行った。今後も、既述の②を目的とする「企業の情報開示」を分析対象として位置付けた研究を中心に行う予定である。
報告の適時性は、他の企業に先んじてより早いタイミングで報告が行われているかどうかという観点から捉えることが一般的である。しかし、先述のように、他の企業の報告日との兼ね合いでより分散したタイミングで報告が行われているかどうかという観点からも、報告の適時性を捉えることができる。先行研究では、より分散したタイミングの観点から財務報告の適時性を捉えて財務報告の適時性に影響を及ぼす企業特性を解明することは、内部統制システムに着目しているかどうかにかかわらずほとんど試みられていない。今後は、決算発表日の分散に着目して、内部統制システムがより分散したタイミングの観点からみた財務報告の適時性に与える影響を解明していきたい。また、より早いタイミングとより分散したタイミングの両方の両方の観点から複合的に決算発表の適時性の程度を捉えても、内部統制システムが財務報告の適時性に与える影響を解明していきたい。
もし多くの上場会社が同じ日に決算発表を行うと情報オーバーロードが生じ、投資家による決算情報の収集や分析が阻害されたり報道機関を通じた情報伝達が制約されたりすることが危惧される。また、決算発表の実際のタイミングは一意に決定せざるを得ないことを踏まえると、より早くかつより分散したタイミングで決算発表が行われることが望まれることは言うまでもない。こうした社会的な背景を踏まえると、決算発表の適時性をより早いタイミングの観点だけでなくより分散したタイミングの観点やこれらの両方の複合的な観点からも捉えた上で、内部統制システムが決算発表の適時性に与える影響を解明することが必要である。

次年度使用額が生じた理由

本研究では、内部統制システムに係る開示資料をデータベースから新たに入手して開示実態調査を行い、記述情報として開示された具体的な開示内容をテキスト型データとして収集して、質的データ分析を行うことを予定していた。しかし、開示資料の入手、開示実態調査、テキスト型データの収集はどれも基本的には手作業によらざるを得ないので、大変な手間と時間がかかる。収集したテキスト型データの分析(計量テキスト分析)は、その後にようやく行えることになる。
そこで、こうした予備的な研究よりも、本研究の開始前にすでに収集済みであった、会社法公布日から数年の間に公表された基本方針についての適時開示資料を利用した研究の成果を用いることを優先して研究を行うため、データベースの購入を見送ってきた経緯がある。そのところ、すでに研究に必要なデータベースは新たに購入し、計量テキスト分析を行うために必要なデータの整理等の作業は終えている。
しかし、計量テキスト分析の対象としたいデータが当初の想定よりもかなり膨大となったため、念のためにテキストマイニング用ソフトウェアの提供元に依頼したソフトウェアの動作検証等に時間を要することとなった。そのため、当該ソフトウェアの整備が次年度にずれ込むことになった。次年度においては、上記ソフトウェアの設定費用のほか、サポート(ないしアップグレード)サービス契約料等に助成金を使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 企業の透明性志向と決算の確定時期が株主総会の開催時期に与える影響―両者の交互作用効果に着目して―2023

    • 著者名/発表者名
      記虎優子
    • 雑誌名

      社会関連会計研究(日本社会関連会計学会学会誌)

      巻: (34) ページ: 37~61

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 内部統制システムの構築に際する企業の積極性と財務報告志向が決算発表の適時性に与える影響―両者の交互作用効果に着目して―2022

    • 著者名/発表者名
      記虎優子
    • 雑誌名

      社会情報学(社会情報学会学会誌)

      巻: 11(2) ページ: 29~45

    • DOI

      10.14836/ssi.11.2_29

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 同志社女子大学研究者データベース

    • URL

      https://research-db.dwc.doshisha.ac.jp/rd/html/japanese/researchersHtml/2909/2909_Researcher.html

  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/read0062961

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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