本研究では、内部統制システムの構築に際して企業が財務報告を重視していたり透明性を志向していたりすることが報告の「適時性」の確保につながることを支持する実証的証拠を提示した。さらに、内部統制システムの構築に際する企業の積極性などの企業の認知とは別の要因が報告の「適時性」に企業の認知と相乗的に影響を及ぼすことも明らかにした。本研究の成果からは、必ずしも直接的な規制に拠らなくても、企業の意向次第で報告の「適時性」を確保できることが示唆されるわけであるから、コーポレートガバナンス・コードのようなソフト・ローを通じて内部統制に対する企業の意識改革を促すことが、政策的に取り得る選択肢の1つであると言える。
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