研究課題/領域番号 |
19K02033
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
飛田 努 福岡大学, 商学部, 准教授 (60435154)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 中小企業 / 管理会計 / マネジメント・コントロール / 新規事業 / 新製品開発 / 設備投資 |
研究実績の概要 |
2020年度は,(1)これまでの研究成果を基礎として著書の執筆,(2)研究開発型中小企業へのインタビュー調査を中心に研究を行った。 (1)は,中小企業に置いて経営管理システム(Management Control System;MCS)を設計する経営者は何を考え,どのような理由で管理技法を選択しているのか。また,MCSを通じて経営者の意図を組織成員に浸透させ,組織目的や目標を実現しようとしているのか。企業内に存在する「思考と現実のズレ」「組織階層間にある認識ギャップ」を調整するために利用されるMCSの構造を明らかにするために,「デザイン」をキーワードとして中小企業における管理会計実践を臨床的に観察してきた研究成果を取りまとめている。ここから,経営者はMCSを活用して戦略の実行プロセスの安定化,経営者と組織成員との間にある認識ギャップを埋めるだけでなく,自ら持つ起業家精神を発揚し,新規事業を実行するために,事業案を具現化するためのMCSのデザインが必要であることを示唆した。 (2)は,(1)を受けて調査を実施し始めたものであり,福岡県柳川市に所在する刃物メーカーのMCSについての調査を進めている。同社では年1度の事業計画発表会を行い,月次で係長以上には予算の進捗を公開するとともに,研究開発費には年売上高の7-8%を投じるなどしている。現時点ではこうしたMCSの制度そのものについての調査ができている段階であるので,その他の調査対象企業と合わせて,引き続き調査を進めることにしたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はその研究期間の大半を新型コロナウィルスの影響を考慮しなければならず,当初計画していた研究スケジュールを実施することができなかった。ただし,著書の執筆を通じて研究課題がより明確になったという一面もある。
|
今後の研究の推進方策 |
中小企業において経営者の果たす役割は極めて大きい。会社の株主として,経営者としてはもちろん,業績を最大化するためのMCSの設計者としての役割もある。本研究は最後の「設計者」としての側面を重視しているが,事業開発,新製品開発や設備投資意思決定においては,いかに経営者としてリスクを認識し,資金調達を安定的に行い,かつ事業の将来性をどのように測定するかが鍵になる。この点,経営者がどのように「目付け」を行っているのかを調査するのは難しい側面もあるが,調査を実施することを通じて,これを明らかにしたい。また,新型コロナウィルスの影響を鑑みつつ,研究計画の進捗に留意したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルスの蔓延,流行により,当該企業の受け入れ体制等の問題からインタビュー調査の実施が困難な状況にあるとともに,学会のほとんどがオンラインで実施されたために,当初予定されていた使用計画通りに進むことがなかった。また,他の科学研究費の研究分担者でもあるため,当該研究費を使用しての出張を行うケースもあった。そのため,次年度使用額が生じることとなった。
|