研究課題/領域番号 |
19K02035
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉 貴子 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00790354)
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研究分担者 |
Shaw Rajib 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (30378848)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NPO / NGO / 防災 / 複合災害 |
研究実績の概要 |
本研究は、東北地方、熊本、西日本地方などの大災害を経験した地域における防災力強化をNPOの参加などの視点から、その社会的役割や今後の発展について考察することを目的としている。そのために、これまで対象地域においてNPOや被災者を中心に災害直後とその後のNPOの活動目的、焦点、財政状況などがいかに変化してきたかについて聞き取り調査を行ってきた。2022年6月には、各地域のNPO/NGOだけではなく、全国的・国際的に活躍しているNGOとともに「これからの防災と災害対応を考える~多様なリスクに備えて~」と題して意見交換会を東京にて開催した。その際に、3つのテーマを設定した:1)防災テクノロジーの活用、2)資金調達、3)人材育成。どの地域でもNPOの存続は容易ではない。しかしながら、地方のNPOは住民や自治体との信頼関係が構築されており、大きなNGOが地方のNPOと連携し、その財政面などを支援すればより規模が大きな支援ができる可能性がある。また、科学技術やデータは防災の様々な面で活用されているが、専門家の中でその使用や知識はとどまっており、住民の生活まで届いていない。NGO/NPOにとっても今後どのようにデータや科学技術を活用していくかは喫緊の課題である。人材育成・確保も深刻な課題となっており、それは資金調達とも関連している。NGO(国際的にも活躍する団体)とNPO(国内を中心に活動する団体)との間でも、連携をとることが困難な場合があることが明らかとなった。非常時に迅速な支援を届けるためには、NPO/NGO間、さらに自治体や政府との通常時の連携構築を強化する必要がある。そのためには、NPO/NGOの日頃の活動をより視覚化し、活動への信頼を高めることが重要。資金調達や人材育成には、IT技術や若者との交流を活発にすることも視野にいれていくべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大のため、昨年の夏ごろまでは聞き取り調査やインタビューなどを実施する際に制限があるなど、様々な影響を考慮する必要があり、予定した現地調査などが進まない状況にあったが、本研究の最終年度となる今年はより幅広く活発に現地調査、聞き取り、インタビューなどを実施したいと考えている。また、新型コロナ感染拡大前には、本研究対象である東北地域、熊本、西日本地域において、NPOやNGOを中心としてインタビューや聞き取り調査を行った。その際に集めたデータと新たに追加する情報・データをもとに、論文をまとめ、国際ジャーナルに投稿することも、この研究の重要な成果であるため、今年は最終目標として論文投稿を実現したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年である今年は、これまでインタビューや聞き取り、会合などで集めたデータをもとに論文をまとめ、国際ジャーナルに投稿することを目標としている。さらに必要な場合は、NPOやNGOに再度、詳細の聞き取り調査などを実施したいと考えている。新型コロナ感染拡大を経験し、これまでの自然災害に特化した防災だけでは、今後増加するであろう様々な災害リスク(自然災害、産業災害、生物災害、人的災害など)に対処することが困難であることが明らかとなり、こうした複雑化する災害対応や復興にどのようにNPOやNGOが対処するべきか、また、対処できるのかについても調査・研究を行いたい。こうした災害リスクの複雑化などは、この研究計画を作成した当初はその主な焦点の中に含まれていなかったが、こうした点はこの研究が目的の一つとしている今後の防災力強化を検討するうえでは、非常に重要な視点となる。このような点は今後、さらに研究を継続していく必要があると考えているので、本年度では次の研究につながるような重要な情報収集・問題点の明確化を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響により、予定通りの調査・研究に支障がでたたため、期間延長を申請し、受理された。
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