研究課題/領域番号 |
19K02042
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 響 長崎大学, 核兵器廃絶研究センター, 客員研究員 (80828707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 長崎 / 浦上 / 原爆 / 都市空間 / 郊外 |
研究実績の概要 |
対外的な発表としては、2020年11月の日本平和学会秋季研究大会(オンライン)の部会「『原爆被害』の語りを再考する――<語られないもの>という視点から」において、主として占領期を念頭に、女性の被爆後体験に関する発表を行った。女性の「生活者」としての側面(「私的」な領域)に注目することで、「原爆体験」に関する理解をより深めることがねらいであった。科研費での本研究の遂行にあたっては、こうしたジェンダーの視点を欠かすことはできない。長崎に関しては、広島に比べるとジェンダー視点からの研究がほぼ存在しないため、なおさらである。 また、「核兵器のもたらす壊滅的な帰結」に対する国際的な関心の高まりの中から核兵器禁止条約が成立したことに関連して、被爆者の役割が大きかったとよく指摘されるが、実際には、被爆後・戦後の長崎の歴史経験が必ずしも世界で広く知られているわけではないと論じる文章を『Peace Review』誌に掲載することができた。したがって、本研究は正にこうした空白を埋めることを目的としたものでもある。 他方、被爆地となった浦上の変容という観点から、すでに収集した資料の読み込みも集中的に行うことができた。この2年間で国立国会図書館(プランゲ文庫/連合国最高司令官総司令部[GHQ/SCAP]文書)や国立公文書館などで収集してきた資料に加え、『長崎日日新聞』『長崎民友新聞』などの郷土新聞の記事、各種の被爆証言集の文章などを対象としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度においては、国立国会図書館や米国立公文書館などでの資料収集を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大のために出張することができず、全く行えなかった。ただし、国立国会図書館所蔵の連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)文書のうち、遠隔で取り寄せ可能なマイクロフィッシュのコピーの収集を開始することができたことは収穫であった。さらに同館プランゲ文庫の占領期雑誌からも、長崎関連の文章を多数、遠隔で取り寄せることができた。長崎県内においては、長崎県立長崎図書館郷土課での郷土新聞記事収集は比較的順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
出張が可能になり次第、国立国会図書館や米国立公文書館での資料収集へと進みたいが、先行きは必ずしも明るくないため、資料の遠隔収集を2021年度にも積極的に行いたい。 また、これらの進捗状況にも左右されるが、研究最終年度にあたる2021年度には、研究の取りまとめと対外的な発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大のために、東京や米国で予定していた資料調査が行えなかったため、2021年度に繰り越して使用する予定である。
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