研究課題/領域番号 |
19K02054
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
人見 泰弘 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (10584352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポスト難民期 / ビルマ系難民 / トランスナショナリズム / 民政移管 / 家族 |
研究実績の概要 |
平成31年度・令和元年は、研究助成の一年目として先行研究の検討や資料収集を中心に進めた。ポスト難民期の移住過程の特質を考えるうえで、難民保護や移住過程に関する研究のほか、難民と帰還、トランスナショナリズムやディアスポラに関する研究の検討を行った。 これと並行してビルマ系難民の移住過程について関東圏(日本)およびヤンゴン市(ビルマ)にて現地調査を行った。関東圏では難民コミュニティの現状と変化を捉えるべくビルマ系の民族行事や関連イベントでの参与観察や難民当事者や関係者への聞き取り調査などを実施した。併せて難民支援団体の会合や難民関連の研究会への参加を通じて情報収集や研究動向の把握に務めた。さらに8月にはヤンゴン市内にて難民帰国者や関係者を対象に聞き取り調査を行った。当地ではヤンゴン市議会議員や現地ジャーナリストとの懇談の機会等を得られたため、民政移管後の現地情勢に関する意見交換を行うことができた。 研究成果として、7月には2019年度武蔵社会学会にて、ポスト難民期に突入してビルマ系難民が質的に異なる新たな移住過程を経験し始めたことを報告した。11月には世界社会学会(ISA)家族研究部会(RC 06)がベトナム・ハノイ市にて主催した国際研究集会に参加し、難民家族が越境的な移住戦略を発展させるなか、その後の日本社会及びビルマ社会への適応及び再適応過程に多様な帰結が生じていることを報告した。平行して9月には日本都市社会学会が開催した質的調査のラウンドテーブルにおいて、難民研究とフィールドへの参与についての報告を行うとともに、11月には戦後日本の難民受け入れをめぐるシンポジウムにてフィールド調査の成果をふまえつつ報告する機会を得た。研究成果の一部について研究雑誌等にて執筆を行い、知見を社会に還元し始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目はほぼ当初の予定通り先行研究の検討を中心に実施した。また夏季休暇期間を中心に関東圏及びビルマ・ヤンゴン市にてフィールド調査を実施し、難民当事者や難民家族、支援団体や関係者へのヒアリングのほか、関連イベントでの情報収集や参与観察を実施することができ、とくに難民家族に関する研究成果を蓄積するとともに難民コミュニティやそれを取り巻く社会事情について検討することができた。 一方でコロナウイルスの感染拡大に伴って春期休暇中のフィールド調査は困難となってしまった。二年目の研究計画を調整しつつ、研究課題の整理や今後の調査日程を調整しつつ研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も関東圏(日本)及びヤンゴン市(ビルマ)を中心にフィールド調査を進める予定である。平行して二年目は、ポスト難民期の移住過程に関する理論研究にも取り掛かり始める。 他方で春先から深刻となったコロナウイルスの感染症拡大に伴い、春休み期間中のフィールド調査を控えざるを得ない状況となった。そして難民コミュニティでもコロナウイルス感染拡大による社会経済活動の制限そして国際移動の制限を受けて、日緬両国においてさまざまな生活課題が生じる事態となり始めている。感染症というグローバル・イシューによる難民の移住過程への影響も課題に捉えつつ、感染症の推移を見据えながら二年目以降の研究計画を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
春期休暇中(2-3月)に予定した海外出張が新型コロナウイルスの影響で実施できなかったために、次年度使用額が発生した。次年度使用額については、2020年度に資料調査などの旅費の一部として使用する予定である。
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