この研究プロジェクトの中で特に顕著な成果として、2019年度に開催されたシンポジウム「Subscription Video on Demand in East Asia」とYu-kei Tse氏の論文「Terebi banare: Historicising internet-distributed television and the ‘departure from television’ in Japan」が挙げられる。これらの成果は、プロジェクト全体の方向性と影響力を決定づけるものであり、ストリーミング時代のメディア研究において重要な節点となった。2019年度のシンポジウムでは、日本を含む東アジア各国のSVODプラットフォームの戦略と影響に焦点を当て、国際的な研究者や業界関係者が集まった。このイベントは、地域的なメディア環境がグローバルプラットフォームによってどのように変容しているかを掘り下げ、異なる国々の視聴習慣や文化的特性が如何にSVODサービスに適応しているかを検証する場を提供した。シンポジウムでの議論は、後続の研究における理論的アプローチと方法論の確立に大きく寄与した。Tse氏の論文「Terebi banare」は、インターネット配信テレビの影響下での「日本のテレビ離れ」言説をメディア論的に再検討するもので、国際ジャーナルに掲載された。この論文は、デジタルメディアの普及が伝統的なテレビ産業にどのような挑戦をもたらしているかを明らかにし、メディア研究において新たな議論を刺激する重要な寄稿である。これらの成果は、日本および東アジアのメディア研究における理解を深め、新たなデジタル環境下でのメディア動向の解析に貢献している。研究プロジェクトを通じて得られた知見は、アカデミックな領域にとどまらず、実際のメディア政策や産業戦略においても有用な指針を提供するものである。
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