最終年度である2023年度は、国際学会での学会発表を行うとともに、コロナ禍で実施できなかったアメリカ・シカゴでの文献調査を実施することができた。 学会発表では、日本の製造業における女性従業員の勤務と昇進に関し、インタビュー調査に基づいて分析し、育児休業や短時間勤務(時短)制度が整い、子どもを持つ女性が仕事を継続しやすくなる反面、長期にわたる時短の取得で、女性が職場内で重要と見なされる部署や仕事に配置されにくくなること、男性のなかに期間は女性よりも短いとはいえ、育児休業を取得するケースが増えているものの、時短を取る人はほとんどおらず、依然として日常的な育児が女性の役割になっていることを示した。 シカゴでの文献調査では、シカゴ大学図書館に加え、シカゴ歴史博物館のリサーチセンターに所蔵されている資料も閲覧、収集した。シカゴ大学では、20世紀初頭の社会学部やSchool of Civics and Philanthropyの活動や講義に関する資料を集め、歴史博物館ではハル・ハウスの報告書のほか、本研究を開始するきっかけになったフランシス・ドノヴァンの「給仕する女」と「セールスレディ」の初版本を閲覧することができた。 コロナ禍により海外調査の予定が先延ばしになったため、延長した最終年度まで新たな資料収集を行うことができなかったことが、本研究の進行に影響を及ぼしたことは否めない。シカゴ学派社会学における女性については、収集した資料の整理を今後もすすめ、数年以内に成果を公表する予定である。
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