研究課題/領域番号 |
19K02064
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
金子 雅彦 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 進学課程, 准教授 (00531360)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | かかりつけ医 / 制度変化 / 新型コロナウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
2020年度は医療制度のうち日本のかかりつけ医制度普及定着策の展開を、2020年に生じた新型コロナウイルス感染症によるパンデミックへの対応も参照しながら、Parsonsの戦略様式論や経路依存論における制度変化の議論を用いて分析した。近年のかかりつけ医普及定着策は従来と同様に、Parsonsの戦略様式論類型における積極的サンクション(誘因と説得)様式をとっている。また、新型コロンウイルス感染症によるパンデミックは日本の医療制度に大きな影響をもたらした。新型コロナウイルス感染症対応のため、発熱患者などの相談・受診は2020年夏までは保健所経由体制だったが、11月以降は地域医療機関対応体制へ転換した。この転換は保健所の負担軽減などの理由が発端だが、かかりつけ医普及定着の視点からみると、結果的に信頼できるかかりつけ医を持つことが得策だと患者が納得する説得戦略に相当し、かかりつけ医普及定着を推進する意図せざる結果をもたらす可能性がある。こうした対応は法律レベルの改正ではなく政令レベルの改正にとどまっているため、Mahoney and Thelenの制度変化類型における制度転用(ルールは公には同じままだが新しい仕方で解釈され実施される)にあたる(ただし政令改正を行政立法ととらえれば制度置換になる)。この研究成果を日本社会学会第93回大会(2020年10月)で報告し、『防衛医科大学校進学課程研究紀要』第44号(2021年3月)に発表した。また、卒前医学教育に関する知見についても、第4回ISA(国際社会学会)社会学フォーラム(2021年2月)においてポスター発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は医療制度のうち、日本のかかりつけ医普及定着策の近年の展開を検討し、その研究結果を学会報告し、論文発表した。また、日本やイギリスにおいて新型コロナウイルス感染症パンデミックが医療制度の各側面にもたらしている影響に関する資料を収集した。イギリスに関する資料は渡航制限のため日本国内で得ることのできる資料に限られたが、もともと2020年はイギリスへの渡航を計画していなかったこともあり、資料収集および分析はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度なので研究のまとめに取り組む。新型コロナウイルス感染症パンデミックに関する医療制度的対応について、1つのトピックに焦点を当てて日英比較を行う。当初の計画では今年度資料収集などのためイギリスへ渡航する計画だったが、現状それは難しい。日本国内でできる限り資料収集を行う。また時系列分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにより、年度初めに計画していた旅費使用などがなくなったため、次年度使用額が生じた。2021年度も新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響がどの程度あるか、現段階ではわからない。そこで、2021年度は旅費よりも物品費(資料購入)などを中心に使用する予定である。
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