東日本大震災以後、また近年の大規模災害の頻発を契機として「想定外」が頻々に語られるようになったように、無知は現代社会にとって鍵概念の一つである。背景としては、複数のリスクが予期せぬかたちで連動するシステミックリスクやNaTech問題が存在するが、本研究は、想定外や無知を、その社会的構築という観点に依拠しつつ分析する可能性を開示するものであり、こうした状況に独特の仕方でアプローチする手がかりを提供しうる。学術的には、無知という不在の対象を社会学的に分析する視座をもたらしうるものであり、社会学史の中からそのための理論的資源を掘り起こすという意味では、学説史的研究にとっても意義あるものといえる。
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