研究課題/領域番号 |
19K02071
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高山 龍太郎 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (00313586)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不登校 / 教育機会確保法 / フリースクール / 義務教育 / 学校選択 / バウチャー / 不登校特例校 / 普通教育 |
研究実績の概要 |
2020年度は、コロナ禍のため、当初予定していた現地調査ができなかった。そこで、教育機会確保法によって「準公式の普通教育」と呼ぶべき新しい公教育の領域が立ちあがりつつあるという認識のもと、不登校に伴う義務教育制度の変容を再解釈し、今後研究すべき課題の整理を行った。 「公式の普通教育」とは、学校(一条校)における普通教育、すなわち学校教育であり、就学義務や学習指導要領などによって全ての子どもに強制される。公式の普通教育では、適切性をめぐる「発言」(ハーシュマン)を通じて不断の政治過程が存在する。不登校は、公式の普通教育からの「離脱」(同前)である。教育機会確保法は、その制度上の位置づけと財政を含む公的な支援の確立を目指した。その結果、立ち上がりつつあるのが「準公式の普通教育」である。 準公式の普通教育は、学校教育と家庭教育のそれぞれの一部を含み、その両者にまたがる。つまり、学校教育と家庭教育という従来の2領域は、教育機会確保法によって、「公式の普通教育」(学校教育)、「準公式の普通教育」(規制緩和した学校教育、および、規制強化した家庭教育)、「非公式の普通教育」(家庭教育)の3領域へ分化しつつあると捉えられる。準公式の普通教育では、顧客の獲得をめぐる市場過程が基本的な性質になる。この性質は、財政支援が教育バウチャーになったとき、さらに促進されるだろう。ただし、現在、準公式の普通教育の領域へ入るには「やむを得ない事情」が要るため、その性質は限定的である。 今後の課題は、公式・非公式の普通教育との関係に留意しながら、準公式の普通教育の制度設計を具体的に考えることである。そのとき、3領域が接する2つの境界線をどこに引くか、境界線を越えて別領域への移行が認められる要件は何かという問いが重要である。制度設計には、2019年度から研究を継続している諸外国の学校選択に関する知見が役に立つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大のため、当初予定していた現地調査ができなかった。調査票調査の実施も検討したが、論点が十分に明確になっていなかったため、延期した。こうした事情から、過去に収集した資料や論文・著作等を読み込むことを中心に文献研究へ変更せざるをえなかった。このため、新しいオリジナルなデータを得ることができず、当初の研究計画よりやや遅れる結果になった。しかしながら、資料や論文・著書等を読み込む作業を通じて、「教育機会確保法によって『準公式の普通教育』と呼ぶべき新しい公教育の領域が立ちあがりつつある」という認識を得たことは、たいへん大きな収穫だった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの流行が終息するまでは、2021年度も文献研究を中心に行わざるを得ない。しかし、コロナ終息後は、聞き取り調査や参与観察を実施する予定である。また、時間が許すようであれば、2021年度中に、そこで得られた知見を調査票調査で一般化したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2020年度には、聞き取り調査や参与観察を予定していた。しかしながら、これらの調査手法は、人との接触が避けられない。新型コロナウィルス感染の恐れがあったため、現地調査の実施は不可能であった。このため、旅費を中心に未使用となり、次年度使用額が生じた。 新型コロナウィルスの流行が終息するまでは、2020年度に引き続き文献研究を中心に行わざるを得ない。2020年度に生じた次年度使用額の一部は、文献や資料の購入にあてたい。コロナ終息後は、聞き取り調査や参与観察を実施する予定である。次年度使用額の多くは、その調査旅費として充当したい。また、時間が許すようであれば、2021年度中に、そこで得られた知見を調査票調査で一般化したいと考えている。次年度使用額は、そこでも用いたい。
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