研究課題/領域番号 |
19K02071
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
高山 龍太郎 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (00313586)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不登校 / 教育機会確保法 / フリースクール / 義務教育 / 学校選択 / 普通教育 / 未来の教室 / 教育支援センター |
研究実績の概要 |
高知県土佐町の教育支援センターと「未来の教室」をめぐる議会・教育委員会・NPOのやりとりを事例に、教育機会確保法によって容認の可能性が出てきた「積極的な不登校」(学校に行けるにもかかわらず、行かない)に対する人びとの意識のあり方について、公開資料を用いて検討した。 NPOは、経産省「未来の教室」に採択された事業を、既に教育委員会から受託・運営していた教育支援センターと一体的に行おうとした。そのことを知らせるチラシが2020年1月上旬に、学校経由で家庭に配布される。そのチラシには「学校での学びも学校外での学びも、学習指導要領に準拠した『生きる力』を育むものです。それをどのような場所で、どのように学ぶかをひとりひとりが選択できます」と書かれており、実際に、それまで学校に通っていた子どもが教育支援センターと一体化したNPOの「未来の教室」事業へ通うようになる。この事態に土佐町議会が猛反発し、教育支援センターの2020年度予算を停止する。結果として、2021年6月、NPOは土佐町を去ることになる。 土佐町議会が反発した要因の一つは、「積極的な不登校を認めると、学校から子どもが去り、学校の予算と人員がNPOに奪われ、将来的に学校が立ちゆかなくなる」という不安である。人口4000人足らずの土佐町は、少子高齢化に悩む中山間地域であり、10数年前に小中学校を統廃合し、小学校1校、中学校1校しかない。また、NPOが実施しようとした「未来の教室」は、子どもの目を世界へ向けさせるものと認識され、若者が土佐町から流出することも懸念されていた。議会の猛反発を受けて、教育委員会は、NPOの実施する「未来の教室」と教育支援センターを切り分け、町の事業である教育支援センターの対象者を「消極的な不登校」(学校に行きたくても、行けない)に絞ることで、事態の収拾を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の不安が残るため、現地調査は控え、前年度に引き続き、公刊された資料や論文・著作等を中心とした文献研究へ変更した。このため、当初の研究計画よりやや遅れることになった。しかし、行政関係の文書については、情報公開が進んでおり、インターネットを通じた資料収集でも、かなりのことを調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの流行が終息してきたので、2023年度は、聞き取りや参与観察などの現地調査を実施したいと考えている。また、時間が許すようであれば、そこで得られた知見を調査票調査で一般化したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2022年度には、聞き取りや参与観察などの現地調査を予定していた。しかしながら、これらの調査手法は、新型コロナウィルス感染の不安があるため、現地調査の実施を控えた。このため、旅費を中心に未使用となり、次年度使用額が生じた。 新型コロナウィルスの流行が終息してきたので、2023年度は、聞き取りや参与観察などの現地調査を実施する予定である。2022年度に生じた次年度使用額は、その調査旅費として充当したい。また、時間が許すようであれば、そこで得られた知見を調査票調査で一般化する予定なので、そこでも用いたい。
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