研究課題/領域番号 |
19K02076
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
片岡 佳美 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80335546)
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研究分担者 |
吹野 卓 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (70228873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 島根県 / 家族実践 / 移住・定住 / 地方 / 人口流出 |
研究実績の概要 |
地方では,人口の減少がますます進んでいる。本研究では島根県をフィールドに,人びとがどのようにして県外に出て行ったのか,また,どのようにして県内にとどまったのか/入ってきたのか,移住・定住する過程について,とくに,地域人口をつくる主体としての「家族」に注目して調査する。2019年度は,以下の調査を行なった。 (1)若年層が大学進学を機に大量に都市部へ流出することについて,その家族の影響を調べるため,島根県松江市内の3つの県立高校(進学校)で,高校3年生全員とその保護者を対象に質問紙調査を行なった(有効回収率は70.1%)。親子ペアで分析することを通して,若年層の県外流出については親の意識が強く関係していることを確認した。すなわち,親が広い世界での学びを重視していれば,子は県外の大学に進学し,その後はもう戻らないと答える傾向がある一方で,親が子に愛郷心をもつことを期待していれば,子は将来も地元で暮らしたいと答える傾向がある。ただし,後者の反応は,女子の場合はとくに,「平凡な人生でよい」「都会で一人で生活していく自信がない」と,子のチャレンジ意欲が抑制される形で示された。 (2)島根県に移住してきた外国人家族や,離婚して子どもを連れて島根県に戻ってきたシングル女性にインタビュー調査を行ない,家族の移住先(島根)での生活が安定し定住が実現するための条件について検討した。個々の家族成員に対し,家族の外部からの支援が充実することの重要性を確認した。また,とくに外国人のケースでは,地域コミュニティに同化するよりも,むしろマージナルな位置にこそ安定した居場所が見出されていくこともあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた質問紙調査もインタビュー調査も実施できており,おおむね当初の計画通り進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
高校生と保護者のペア調査については,非進学校を対象に実施し,進学校での調査データと比較分析を行なう。外国人など移住者へのインタビュー調査では,新たに調査対象者を増やしていく一方で,時間経過に伴って地域適応のための家族実践がどのように変化したかを追求するため,前回の調査対象者にも再度調査を行なう。 また,調査結果から得られた知見を政策につなげていくために,行政との情報交換が不可欠となることから,行政と共同での研究会やシンポジウムを開催する。シンポジウムは,一般市民にも公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高校生と保護者を対象にした質問紙調査は,当初調査票の配布と回答票の回収を郵送する予定であったが,各学校において生徒に,生徒用・保護者用の調査票を配布・回収していただけたので郵送費を使わなくて済んだ。 その残額は,2020年度にシンポジウムを開催するためにかかる費用に充てたいと考えている。
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