研究課題/領域番号 |
19K02076
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
片岡 佳美 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80335546)
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研究分担者 |
吹野 卓 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (70228873)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 島根県 / 家族実践 / 地方 / 新型コロナウイルス感染症 / 高校生 / 親子ペアデータ |
研究実績の概要 |
本研究では,人口減少が切実な問題となっている島根県をフィールドに,地方に暮らす人びとの移住・定住の選択過程について,とくに「家族」に注目して調査することを目的とする。2年目の2020年度は,新型コロナウイルス感染症拡大の影響で,当初計画していた高校生を対象にした質問紙調査,インタビュー調査,シンポジウムは実施できなかったが,以下の調査研究を実施することができた。 (1)選挙人名簿から無作為に抽出した松江市民を対象として,9月に調査票調査を行なった。コロナ感染が大都市で拡大したことを受け,地方で暮らすことのメリットが世間では注目を集めていたが,調査結果でも,コロナ感染拡大を機に人びとが家族を求めるようになり,そして「家族で島根定住」という選好を形成・強化していることが示された。これは「最後には家族が頼り」という,日本社会に根付いている家族主義を反映するもので,家族を支える公的な仕組みが整っていない現状では,結局は現実的な地方定住という選択・実行には繋がらないと考察した。 (2)2019年度に高校生とその保護者に実施した質問紙調査の,親子ペアデータについて詳細な分析を行なった。子が都会に出ることは,女子の親より男子の親のほうが重視していたが,親が,視野拡大や自己実現が大切という価値観に基づく家族実践を行なう場合,女子は都会志向となることが示された。一方,男子については,親のそうした価値観は,子の都会志向を高める家族実践も,ふるさと志向を高める家族実践も生ずることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,コロナの影響で,当初計画していた高校生を対象にした質問紙調査,インタビュー調査,シンポジウムが実施できなかったが,別の調査は実施することができ,また,2019年度の調査で得たデータについてもじっくりと分析することができた。結果として,2021年度調査に向けての研究課題がより明確になった。そうした点で,おおむね順調にすすんでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,2020年度実施できなかった調査,そしてここまでで明らかになったことを一般市民に発表・議論するシンポジウムを優先的に実施していく。ただし,今なおコロナの影響は続いているので,そのなかでどう実現していくか工夫する必要はある。インタビュー調査についても,オンラインで行なうことも選択肢に入れて検討したい。また,コロナという,生活に大きく影響を及ぼす出来事を経た今,これからの調査で移住・定住の問題を追究する際は,コロナの影響についても見ていく必要があると考えている。コロナに起因する社会的・経済的生活の変化に,家族はどう対応しているのか,そしてそれらの対応が家族または子どもの移住・定住にどう影響しているのかについて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は,新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け,調査活動が中止・変更になった。とくに,研究者や行政と共同で開催する予定であったシンポジウムが実現できなかったことが,次年度使用が生じた理由として大きい。このシンポジウムは,2021年度に実施する予定で,2020年度の残額はそこに充てる。
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