日本の農業経営における「農業の後継者不足」、「農業地域の担い手不足」と言う喫緊の課題の解決策として農業の新規参入が挙げられる。新規参入には、経営資源の充足だけでなく、家族の理解や協力が農業経営の継続に不可欠な要素であると言われている。本研究は若手の農業経営者とその家族に焦点を当て、家族間の役割分担や協力行動から農業経営の新規参入の成功条件を解明しようとするものである。そのために、公的統計である『農林業センサス』の個票から構築した世帯員パネルデータによる農家の農業経営とその世帯員の数量分析と国内のインタビュー調査による家族の行動実態や参入ルートそして主観的側面などの定性分析の両側面から本研究課題を推進していった。 前年度に引き続き、(1)1995-2015年農林業センサスパネルデータを用いた実証分析、(2)2020年農林業センサスのデータセット構築を進め、1995-2020年農林業センサスパネルデータ構築を行った。(3)これまでの研究成果の総括として、新規参入農家と子の継承農家について経営継続条件の比較を行った。(4)若手新規就農者に対するインタビュー調査を関西地方1件、山陰地方2件で実施した。非農家かつ夫婦での新規就農は、就農開始期の経営資源が確保されることにより、経営の安定化や拡大再生産に貢献することが明らかとなった。農業センサスのパネルデータによる定量的分析とインタビュー調査による定性分析に結整合性な結果が得られた。本研究結果をもとに、農林業センサスの意義と課題を「日本学術会議」、「公的統計ミクロデータ研究コンソーシアム」のシンポジウムで報告した。本研究で得られた成果は来年度も引き続き報告していく予定である。
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