研究実績の概要 |
本研究計画は,「米国諸都市のネイバーフッドカウンシルが『都市政策と都市ガバナンスに与える実際的影響力とその機能』の実相を解明しようとしている。 2019年度には、関連自治体の「法規」・要項等資料についての入念な調査,また市の政策意向などについての調査を実施した。他方、2020年度と2021年度には、コロナ禍のため現地調査ができなかった。ただし、2020年度には、コロナ禍ではあったがオンラインでのヒアリング調査を通して,「コロナ禍でのホームレス問題にかかわる,ネイバーフッドカウンシルの対応と市自治体の政策」の事象を通して,自治体の政策形成とネイバーフッドカウンシルの関係性と都市ガバナンスへの影響を明らかにした。2021年度には,「ネイバーフッドカウンシル」と法制度上類似である,公共住宅に設置される「レジデントカウンシル」という法定住民組織との比較検討を,米国の実践者・研究者O.Duran氏とともにおこない、比較を通じて、都市内分権の特質が浮かびあがらせることとなった。 本2022年度には、コロナ禍の下降傾向を得て現地調査を実施した。タコマ市のコミュニティ振興の担当者(V.Laurin氏)にヒアリングする機会を得て、コロナ禍でのホームレス問題と都市内分権のかかわりを確認した。さらに、シアトル市のコミュニティ振興局の局長(S.Morningstar氏)および部局スタッフらへのヒアリングを実施した。シアトルでは、2016年に都市内分権制度の廃止を断行したところであることから、都市内分権が廃止された場合と、タコマ市、ロサンジェルス市やまた日本各地のまちづくり協議会という都市内分権制度が運用されている場合との対比を念頭に調査をおこない、とりわけ、都市内分権制度の廃止がどのような脈絡でなされ、可能となったのかを探った。これらにかかわる成果については、論文2編にて刊行した。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度にコロナ禍のため使用できなかった米国調査の旅費の額が、そのまま継続されて2022年度に積み残された形となり、米国調査を実施したが、過年度から積み残された形で消化することとはならなかった。 ただし、その予算額は本研究にとって現時段階で極めて貴重なものであることから、2023年度に、理論化の総まとめと、日米においての研究の発信に用いたい。とりわけ、2023年5月に開催される全米コミュニティ協会(Neighborhoods,USA, テキサス州エルパソ大会)において、米国諸都市の都市内分権制度(ネイバーフッドカウンシル)の政策・ガバナンスのダイナミクス(動態相)にかかわる新たな視座として研究成果にもとづいて発信することのためと、理論化のとりまとめをおこなうための予算として有効に大切に使いたい。
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