研究課題/領域番号 |
19K02086
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
遠藤 薫 学習院大学, 法学部, 教授 (70252054)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | てんでんこの倫理 |
研究実績の概要 |
2020年度は、文献調査はもとより、東日本大震災から10年目にあたる。ほぼ毎年行ってきた、東日本大震災に関する全国調査を本年度も行い、その調査結果について多方面から分析を行った。その結果、人びとの東日本大震災および被災地の今後についての意識は、この数年間、大きく変化はしていないことがわかった。一方、復興の状況については、まだ十分ではないと意識されている。一方、このような意識の深層にある倫理観は、「津波てんでんこ」の言葉に表れているように、一見、個人的合理性を優先させることが全体にとっても合理的であるという考え方のように見えつつ、実は、自らは犠牲となっても他者の救済を優先させようとする利他主義にもとづくものであると考えられることがわかった。 このような倫理観は、自然環境といかに共生していくかという環境正義が世界的に求められている現在、SDGsとも関連して、将来に向けての重要なヒントとなると期待される。 ただし2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大のため、現地でのフィールド調査や、インタビュー調査などを実施することはできなかったのは大変残念である。反面、現在も世界を苦しめているコロナ禍の多面的様相と、東日本大震災の様相とを比較検討し、さらにそれらを統合的に考察することにより、世界のサステナビリティやレジリエンシーに関するより深い分析の足がかりをえられるのではないかとも期待している。 また、メディアにおける東日本大震災報道の変化も、重要な論点として追求している。この視点も、他にない研究と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大のため、緊急事態宣言や出張の自粛要請などにより、現地でのフィールド調査や、インタビュー調査などを実施することはできなかった。世界全体を襲った災禍であり、やむを得ないこととはいえ、その分の研究が進められなかったのが残念である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウィルスの感染拡大は収束しておらず、現地でのフィールド調査やインタビュー調査などを行えずにいるが、コロナ収束とともに、早急に行いたいと考えている。また今年も引き続き文献調査および意識調査を実施し、時系列的な貧化および不変化に関する分析を行いたい。さらに、2020年度の研究から導かれた「てんでんこの倫理」仮説について、被災地域の歴史的、産業史的、自然史的基盤との関連を検討し、民俗学や国学の枠組みとも関連させつつ、これを時代に生かすべく、深い考察を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言、自粛要請などのため、現地出張、フィールド調査、インタビュー調査などができなかったため。自粛要請が解除された後、2020年度にできなかった調査などを速やかに実行する予定である。
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