研究課題/領域番号 |
19K02088
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
久保 真人 同志社大学, 政策学部, 教授 (70205128)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医師 / 女性医師 / バーンアウト / 燃え尽き症候群 / サービス経済化 / ヒューマンサービス / 働き方改革 / ストレス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、医師の労働環境、働き方改革、サービスの質の確保の課題を、ジェンダーの視点も含めた観点から分析し、その改善点を示すことである。まず、医師の労働環境の変化の背景となっているサービス産業化ならびに医師のストレスをテーマとした文献調査をおこなった。その結果、以前は看護職や介護職などクライエントとの密な接触が求められる職種の典型的なストレスであったバーンアウトの事例が、医師など高度専門職の間で頻発していること、そしてその背景には患者の生活に踏み込んだ医療・ケアを実現するために、医師はこれまで以上に幅広い目配りをしなければならなくなった状況があり、近年のサービス産業化の流れが、公共サービスの労働環境に大きな変化をもたらしていることが確認された。 その内容は、「バーンアウト(燃え尽き症候群)とは ―概念と医師のバーンアウト」(医学のあゆみ, 268(6), 533-535, 2019年)にまとめられた。さらに、第60回日本神経学会学術大会シンポジウム「脳神経内科医の燃え尽き症候群を防ぐための対策と提言」に演者として参加し、脳神経内科医の労働環境について議論をおこなった。その中で、高齢化に伴って急速に増加している脳血管疾患や認知症の患者への対応において、医学的見地からだけでなく、生活者としてのQOL(Quality of Life)の見地からの治療と助言を求められるようになった脳神経内科医の実情について知り、現在進行中の医師の働き方改革の方向性についての問題点についても聴取することができた。2020年度以降は、医師の専門領域による違いも視野に入れたうえで調査を進めていく必要性を感じている。さらには、本研究の目的の一つである女性医師の問題についてもあわせて検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、2019年度終わりから2020年度にかけて医師のインタビュー調査を予定していたが、コロナウイルスの影響で、現在までインタビュー調査を実施できていない。現在医療の現場は極度な緊張状態と過密スケジュールにおかれており、現場の医療スタッフに調査を依頼できる状況にはなく、2020年度以降の調査についても白紙の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルスをめぐる状況が当分の間続くとの予想が支配的になってきた現状では、当初の研究計画を大幅に見直す必要があると考えている。まずは、文献調査の比重を増やすことと、ネットを使った遠隔インタビューの可能性について探る。さらに、今回のパンデミックが浮き彫りにした医療現場の問題点についても研究の視点に加え、当初の「医師の働き方の課題と改善策」を提言する目的から、医療組織の問題点に裾野を広げて検討することも社会的な意義の大きい研究になると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響で医療現場はひっ迫した状況が続き、2019年度に予定していた医師へのインタビュー調査が実施できなかった。この状況が当分の間継続する予想のもと、2020年度は、文献調査の比重を高め、遠隔調査によるインタビューやネットによる質問紙調査の前倒しの可能性も含めて研究計画の見直しを検討する必要がある。
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