2023年度は子ども虐待に関わる男性向けの脱暴力グループワークを実施した。月2回、12か月、合計24回開催した。研究計画の最終年度となるので、男性性と家族システムの双方にかかわる変化について考察と分析を行った。男親を対象にしたアプローチ(男親塾)は男性性ジェンダー問題を子ども家庭福祉に持ち込む役割をもつことが明確になってきた。とりわけ児童福祉の対象としての虐待に加え、DV が交差している点を介入対象とする必要に対応している。分離している間のストーキング行為対策も必要である。家族丸ごと支援が「家庭の問題」には必要であり、それら総体を臨床社会学的な介入として定義している。親子関係・夫婦関係(内縁関係や元夫婦関係含む)のサブシステムから成る家族は、関係性の束として存在しているが法制度は縦割りである。現実の問題解決に十分には応答できていない現状があり、研究プロジェクトとはいえ外部連携をとおして接合・統合することを試みた。焦点は当該の家族システムにとっての父親の暴力対策である。それを男性性ジェンダー研究の視点からアセスメントし、まずは暴力を除去することが先決となるので、父親、夫、男性の交点にある「男親」として対象を特定化した。こうしたアプローチの有効性と必要性を検証してきた。男性性ジェンダーを色濃く纏い、日常的な育児にはあまり関与しないにもかかわらずしつけと称して暴力を用い、家族を統制する義務と役割そして権利が父親にあると考えている男たちを対象にした。事案によっては母親も体罰を誘発する男親役割を期待しているので家族システムへの介入が必要となる。さらに、公共政策に関わる課題について、本研究をもとにして関連する行政組織(内閣府、自治体)の委員会で政策提言した。
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