本研究の目的は、先行研究において社会関係資本には階層差と階層分化が指摘されているなかにあって、子育てを通じて形成される親の社会関係資本には流動性が見られるのではないかということと、子育てを通じて得た親のネットワークが、子どもとは直接関わらない場面でもどのように利用されているのかという点に焦点を当て、手法としては就学前の親子の参与観察と親へのインタビュー調査を用いる計画であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、参与観察とインタビュー調査とが困難になった時期があったことに加え、コロナ禍の影響を知るために、質問紙調査も合わせて実施した。 質問紙調査の結果からは、コロナ禍により対面的相互行為に制限が加わったことの影響は、パンデミック後に第1子が入園した子どもを持つケースに対し非常に大きく、それを補完するものとしてインターネットを通じた情報収集やSNSを通じた繋がりが模索され、また個人的相談相手として学校時代の友人というそれ以前に作られていた関係性がより頼りにされる傾向が見られた。家族規模の縮小のなか、孤立感・孤独感を緩和するうえで、いわゆるママ友の人数が多いことはプラスに働くが、そのママ友の人数と、パンデミック後の入園であったことの間に直接の関連は見られず、ママ友の数を増やすには、母親自らが他者にアプローチすることが鍵となっていた。階層要因との関連を見ると、ママ友の数は学歴とは逆の関連が見られた一方で、個人的な相談という質の部分では、学歴の高い母親において活用される傾向がみられた。それがとくに子どもの教育面で活用される傾向にあったことは、階層再生産の動きが幼少期に始まっていることを予測させる。 そのことは、ともにコロナ禍前には地域ネットワークの中心にいた地元出身で比較的高階層の母親と移動者で非高階層の母親へのコロナ後のインタビューからも裏付けられる結果となった。
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