研究課題/領域番号 |
19K02104
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐々木 祐 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90528960)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移民 / 難民 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中央アメリカ、特にグアテマラ・ホンジュラス・エルサルバドルから、「北」を目指して移動する移民たちが構築するテンポラルな生き延びのためのネットワークやその戦略を明らかにすることにある。とりわけ、現在のアメリカ及びメキシコの移民政策により、本来であれば移動経路に過ぎなかったメキシコ国内にとどめ置かれている人々が、その経験を通じてどのように自らを位置づけ、またどのように行為しているのかに焦点を当てる。 2019年末からのCovid-19の蔓延により、移動・滞在中の感染を恐れ、こうした人々の数は一時的に減少したことがメキシコおよびアメリカ当局の資料や報道から明らかになっている。だが、移民に比較的融和的と認識されるバイデン政権の成立と、感染症流行による国内経済の悪化という二重の要因を背景に、2020年後半からは再び北を目指す移民は増加傾向にあり、大規模な集団的移動(いわゆる「移民キャラバン」)も数次にわたって発生している。 こうした状況をうけ、研究二年次にあたる本年度、予定されていた現地調査は実施できなかったが、SNSなどオンラインを通じて、支援組織や移民本人への遠隔での調査は行うことができた。また、これまで収集した資料を含め、文献の整理と分析から、より構造的な移動のメカニズムとその特質についても理論的な考察を進めることができた。 そもそもが不確定な要因(出身国および移動先における)に強く規定されている移動経験に、さらに感染症の流行とそれに伴う諸制度・移民政策の変更という予期せぬ要因が追加されたわけだが、こうした変動へのある種のレジリエンスが示されていることの端緒が明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19のため、予定していた現地調査は実施できなかった。だが、上述したように、遠隔での調査は実施できており、また文献資料の分析も進んでいる。 研究成果は論文2本および国際学会報告1本として公開した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の3年目にあたる2021年度は、前年度の知見をさらに深めるべく同支援施設での定点観測を遠隔での聞き取りやメールのやりとりにて継続する。また、Covid-19によって生じたメキシコ国内の移民の生活の変化についても同様に調査を行う予定である。こうした調査により得られた成果は、論文および学 会発表の形で公表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は海外調査が実施できず、関連する旅費・謝金などが支出できなかったため、それを次年度使用額として計上した。翌年度は、状況をみて海外調査を実施する予定である。また、資料の購入や、遠隔での聞き取りのための機材費用などに支出する予定である。
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