研究課題/領域番号 |
19K02108
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
石井 由香 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (20319487)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多文化主義 / オーストラリア / アジア / 教育政策 / 文化政策 / アジア系オーストラリア人 |
研究実績の概要 |
本研究は、豪州における経済主義的多文化主義と日常的多文化主義が、文化・教育政策および文化・教育コンテンツにどう反映されているのかを調査分析し、この両方の多文化主義のホスト社会における文化的ディスコース、多文化理解への影響を考察することを目的とするものである。この考察にあたっては、特に「アジア」をめぐる連邦および州レベルの文化・教育政策内容と文化・教育コンテンツ、大学におけるアジア研究・教育内容およびアジア理解の推進に関わる社会団体の活動内容を分析対象としている。 今年度は研究計画初年度であり、まず資料の収集およびデータを得るための現地調査を実施した。国内において、図書館、インターネットを通じて先行研究および関連研究資料と政策資料を収集した。また、2019年9月に、約2週間メルボルンとキャンベラに調査出張を行った。この現地調査においては、大学における関係者へのインタビュー調査および資料収集、国立図書館およびヴィクトリア州立図書館における資料収集を集中的に行うことができた。得られた資料・データに関して、整理・分析を進めている。 また、本研究に関し、2019年度オーストラリア学会30周年記念国際大会(青山学院大学、2019年6月15・16日)におけるパネル"Australia in Asia, Asia in Australia"で"Understanding Asia in Australian Education"というテーマで報告(英語)し、国際的な研究交流を深めることができた。関西外国語大学国際文化研究所・第6回IRI言語・文化コロキアム公開講座(2020年1月25日)では、「多文化社会オーストラリアで『アジア系オーストラリア人』であること」というテーマで講演を行った。いずれの機会も本研究の部分的成果発表であるのと同時に、さらなる考察に寄与するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、2020年2月前半までは順調に実施できていた。研究実績の概要にも記した通り、資料収集、2019年9月の現地調査については特に問題なく進めることができていた。資料・データの整理、分析も継続していた。2019年11月には、メルボルンで開催されたThe 7th Asian Australian Identities Biennial Conference of the Asian Australian Studies Research Network (AASRN) Conferenceに参加し、情報収集と共に現地研究者とのネットワークを築くこともでき、現地調査の見通しもさらに具体的になった。その上で3月に1週間のシドニーでの現地調査を実施する予定で準備も進めていた。対外的な研究成果の発信も、初年度に2件行えたことは、むしろ予定より進んでいるということもできる。 しかし、2020年2月後半以降の新型コロナウィルス感染拡大の影響は非常に大きく、日本およびオーストラリアの状況が刻々と変化していく中、2020年3月の現地調査を中止する決断をせざるを得なかった。また、2月後半以降は、この状況変化への対応に追われ、資料・データの分析を進めることも難しい状況が続いた。 このため、最後の1か月半に予定していた現地調査と分析が実施できなかったという意味でやや遅れていると言わざるを得ない。ただし、そこまでは順調に推移しており、このことがなければおおむね順調に推移している、といってよい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度については、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、現時点では日本からの出国、オーストラリアへの入国のどちらも難しい状況にあり、これがいつ解除されるのかということによって現地調査の実施が左右される。現地調査は2020年8~9月と2021年3月の2回実施予定であるが、実施できないことも想定して研究を進めていく必要がある。 幸い、昨年度の調査で得た資料・データが相当の分量にのぼっている。また、インターネットを通じて得られる資料もかなりあるので、引き続き資料収集を進めつつ分析、考察を行い、まず形にできる部分を報告、論文などの形で先行的にまとめ、それを基礎としてさらに調査を進めるよう、計画の組み立てを若干変更して対応する。 また、現地でのインタビューは本来直接の面談として実施するべきところであるが、ZoomやSkypeなど、インターネットツールによるインタビューが可能な場合は、適宜実施していきたいと考えている。 こうした事態であるので、できるだけ柔軟に、資料およびインターネットを駆使する形で研究を進め、現地調査の機会をうかがいつつ、全体として当初予定していた内容を実施できるよう努めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により、2020年3月に予定していたシドニー調査出張を中止せざるを得なくなったため、次年度使用額が生じた。 次年度の研究計画においては、オーストラリア調査出張、資料収集、研究成果発表を予定している。この計画遂行のため、次年度の助成金と合算し、適正に執行する予定である。
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