本研究は2019年度から開始し、当初3年の予定であったが、コロナ禍の影響を受け研究計画の見直しが必要となり、計画を2年延長した。豪州における経済主義的多文化主義と日常的多文化主義が、特に「アジア」をめぐる文化・教育政策および文化・教育コンテンツにどのように反映しているのかを調査・分析し、この両方の多文化主義のホスト社会の文化的ディスコース、多文化理解への影響について考察するという本研究の目的に即し、文献・資料調査と現地調査を5年にわたり実施した。 文献・資料調査については、書籍、論文などの文献資料、連邦政府、州政府、大学、研究関連団体および社会活動団体などによるオンライン資料・情報の収集と分析・考察を5年間継続的に行った。2023年度も追加の文献・資料収集を行い、必要な文献・資料の収集を無事に終え、分析・考察を進めることができた。 また、現地調査については、2019年9月の第1回調査の後コロナ禍により長期の中断を余儀なくされたが、2023年3月にようやく第2回調査を実施することができた。2023年度は第3回調査として、8月に11日間のキャンベラ・シドニー調査を実施した。現地での文献・資料収集に加え、第2回調査に引き続き複数の大学で、大学におけるアジア研究、アジアに関する教育の動向を中心に関係者からの聞き取りを行った。これらの3回の現地調査により、分析・考察に必要な文献・資料、データを得ることができた。 2019年度には国際学会発表と公開講座での講演を各1回行った。2020年度には英語書評論文1本が学術誌に掲載された。またコロナ禍による厳しい状況のなかでも能う限り着実に調査と分析・考察を積み重ねた。全体として、また2023年度も、今後の成果発表に向けて、十分な実績を上げることができたといえる。
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