研究課題/領域番号 |
19K02109
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
櫻田 和也 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (70555325)
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研究分担者 |
吉村 智博 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (70599282)
原口 剛 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40464599)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 釜ケ崎 / 寄せ場 / アーカイヴ |
研究実績の概要 |
大阪市西成区の旧字・釜ヶ崎は、近現代を通じて「社会問題」の集積点として耳目を引きつけてきた。それゆえ社会病理学および労働経済学から、その変革を企てた解放社会学に至るまで、先行研究の蓄積には豊富なものがある。しかし釜ヶ崎では今あいりん総合センターの建て替え計画に象徴されるように「寄せ場」空間としての転換期をむかえる一方、地域では厖大な未公表史料群が忘却・劣化・損失・散逸の危機に瀕している。 初年度に収集した未公表資料群をもとに、2年度目は近現代資料集『昭和期の都市労働者:大阪・釜ヶ崎・日雇』戦後編の監修に注力し、なんとか2020年度末日付で前後編前期の第2回配本を実現することができた。これは第1回配本として既刊の戦前期編につづく戦後期の行政文書に加えて、大阪万博と前後して運動史上の画期をなした全港湾建設支部西成分会結成(1969年)から釜共闘・現闘委(1972年)結成期に至る期間のうち公表可能な一次資料を選定したものである。 元研究者・活動家らからは貴重な資料が多数寄せられており、引き続き既往研究では未消化の史料批判を基礎としてこれまでの「寄せ場」研究史をとらえなおし、かつて期待された学問的「地殻変動」(八木正)に学史上正当な再評価を加えること。その上で縁辺的労働力を歴史の担い手として再発見してきた世界的な研究動向に照らして、これからの地域の歴史社会学を切り拓くことを目指したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目指した近現代資料集の編纂は、画期となる1973年までの時期についての刊行を実現することができた。ただし酸性紙の劣化、および感染症による文書館等の閉館措置などの事情から、収集・複写に困難をきたし部分的に収録を断念した史料もある。他方、写真資料等のデジタル化には想定以上の期待が寄せられており、予定した作業は進捗しているものの当初見込みには収まらない規模になりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
保存状態のよくない写真資料(ポジスライドおよびネガフィルム)については、現物の暫定的な修復・保全とあわせて電子化を急いでいる。文書資料の復刻については戦後編前期とすることで1973年までの刊行を優先したが、最終年度にあたっては、これまでの成果の報告とともに貴重な史料を散逸させずにアーカイブ構築を企図して、今後より大きな課題にとりくむ計画をたてなおしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
長引く感染症の影響で調査計画は大幅な変更をよぎなくされて旅費を支出していないが、最終年度にも資料修復・デジタル化等の出費がつづく予定である。
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