研究課題/領域番号 |
19K02112
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
黒嶋 智美 玉川大学, ELFセンター, 助教 (50714002)
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研究分担者 |
小宮 友根 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
西阪 仰 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80208173)
須永 将史 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (90783457)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 会話分析 / 内部被ばく検査 / 診療場面 / 知覚 / 医師の職務 / 患者の責任 |
研究実績の概要 |
2020年度は,新型コロナウィルス感染症の感染拡大が懸念されたため,データの収集およびフィールドワークを延期せざるを得なかった.そのため,これまでに収集したデータを分析し始めることに着手した.データセッションは期間中2回ほど,オンライン方式で行なうことが出来た. この他に,慢性疾患の定期診療のための診察場面の相互行為を分析し,医療記録がどのように医師と患者の志向の対象となることで,相互行為の資源として用いられているのかを明らかにした(黒嶋,2021).この研究では,医師と患者がそれぞれの具体的な行為を産出する際に,医療記録の扱いについて概念的区別を行なうことで,患者の自身の検査結果に対する責任や期待が形式的に示されること,また他方,医師も患者とは異なる方法で医療記録を見たり読んだりすることで,医師が職務を持って行う,通知や推論などの行為の産出を達成していることを記述することが出来た.また,このような定期診療場面において期待される全体構造と,患者が具体的に持つ相談事がどのように位置づけられるのかについても明らかにした(須永,2021). 同様に,在宅医療マッサージの診療場面の相互行為の分析も行ない,患者の抱える問題が,施術者によってどのように(主に触覚を通して)知覚され,確認されることで,治療の必要性が認識され志向されるのか,それによって,医師による触知可能な問題は医師としての権限の対象に位置づけられ,患者が自身の身体について負うべき責任についても承認を与えるやりとりになっていることも明らかにすることが出来た. 今後はこのような知見をふまえ,さらに,内部被ばく検査結果の通知という課題を,医師と患者はどのように乗り越えているのかを明らかにしていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年に流行した新型コロナウィルス感染症の感染拡大が収まらないため,前年度の後半に予定していたフィールドワークもデータ収集も行うことが出来なかったため,当初の計画よりもやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,感染症の状況を見守りながら,徐々にフィールドワークを再開させていきたい.それと同時に,これまで収録したデータの観察を進めることで,研究トピックを特定し,それぞれに論文化を進めていく.学会発表もそれに応じて行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウィルス感染症の感染拡大で、調査を中止せざるを得なかったため、調査旅費予算を執行出来なかった。また、予定していたアメリカ社会学会もオンライン開催になり、国際学会旅費もかからなかった。このような理由から次年度に使用額として持ち越すことにする。次年度は、感染症の状況を見ながら徐々に調査を再開したい。再開できるようになったら、調査用の旅費予算として使用する。また、次年度は学会もまだオンライン開催になることが見込まれるが、引き続き、分析を進め、論文化していくために、反訳や英文校正等で使用する計画である。
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