研究課題/領域番号 |
19K02114
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
紀 葉子 東洋大学, 社会学部, 教授 (40246781)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日系ブラジル社会 / コロニア語 / 方言 / クレオール / 言語ハビトゥス / 文化資本 |
研究実績の概要 |
現地調査の遅れを取り戻すことが何より大きな課題である。現地調査が不可能であることに加え対象者が高齢者であることから、聞き取り調査等を実施することができなかった。コロナ禍後、初めて渡伯することが可能となり、熟年クラブ連合会の本部を訪れたが、まだ十分に参加者は戻ってきていなかった。閉鎖されていた期間が長期に渡ったこともあり、通う習慣が途絶えてしまっているため、遠方からの参加者は特に少ない状況となっていた。また、日系人の集まりに参加する機会が乏しかった分、自宅でNHKの国際放送やYouTubeを通して日本語の動画を視聴する時間が増えており、日系コロニア独特の言語での会話機会が減少し、コロニア語が用いられることが減っている様子が参与観察から伺えた。 サンパウロ大学日本語学科のレイコ・マツバラ氏はコロニア語を「方言的なるもの」ではなく、独立した言語として捉えたいとの見解を述べておられるが、数年で著しく変化するようであると、言語とみなすことは困難であるように思われる。また、日系人が用いる外来語としての日本語は動画の視聴によって増えており、語彙にも微妙な変化が見られるようであった。 女性独特の言語表現、女性語については従来通り、増えてもおらず、減ってもいないように見受けられた。これらを調査紙を用いた調査によって実証的に明らかにすることが、次年度の課題である。 コロナ禍に人と人との直接的な関わりが乏しくなることによって、対話の機会が失われ、コロニアで独自に発展してきた言語(それを方言の一種とみなすか、独立した言語とみなすかは今後の研究の課題となるとはいえ)が危機的な状況に陥っていることは衝撃的でもあり、文化資本としてのコロニア語が日系社会に存続することが可能かどうかを実証的な調査によって明らかにしたいと考えるに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現地調査ができなかったことは致命的であり、大幅に遅れていると言わざるを得ない。web等を利用して補うことも対象が高齢者であることから容易でなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者の集まりに徐々に参加者は戻りつつあることに加え、2024年度中は熟年クラブ連合会の本部地下の宿舎に滞在するため、日常が調査となる。遅れを取り戻すことは可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
渡航規制が解かれたとはいえ、日常が戻った状態とはいえず、十分な調査ができる環境には戻っていなかったため。より良い環境での現地調査をするために次年度使用額が生じた。
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