研究課題/領域番号 |
19K02115
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
梅崎 修 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (90366831)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 労働史 / 労使関係 / オーラル・ヒストリー / 日記 |
研究実績の概要 |
本研究では、エゴ・ドキュメントを使って日本の労働社会に独自な労働者意識の特質を分析する。文化・余暇や家庭も含めた「労働社会」の形成を把握し、さらに私的領域を超えた活動の中で生まれた日本特有の労働者意識を歴史的に位置付けたい。分析で中心的に使う資料が、あるユニオン・リーダーの52年間の日記(中村日記,29冊)である。この日記の整理・公開を進め、オーラルヒストリーや文書資料を多角的に利用して労働者の歴史経験を再構成する。 エル・ライブラリーに保存されている「中村日記,29冊」の整理状況を確認し、デジタル化の手続きを行った。現在、研究者間でこのデジタルデータを共有している。 ただし、中村日記自体は、膨大な分量になるので、中村幸男氏が組合リーダーを引退するまでの日記をデジタル化して、引退後に関しては、当面、分析から除外することを決めた。この資料に関心を持つ労働史研究者と一緒に研究会を開催し、エゴ・ドキュメントである日記の研究テーマについて話し合いを行った。 一方、梅崎は、南雲智映、島西智輝、下久保恵子と一緒に研究を続けてきた近江絹糸人権争議の論文(「家族賃金」観念の形成過程:近江絹糸人権争議後の交渉を対象に)を改訂し、社会政策学会の学術誌に投稿し、掲載された。近江絹糸人権争議は、中村氏の所属し、労働組合活動を始めた頃の事件である。この論文で明らかにされた事実も、科研費プロジェクトを進めるうえで欠かすことができないと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの整理・デジタル化が行われたので、エル・ライブラリーに訪問しなくても複数の研究者で史料の読解が可能になった。研究の基盤が完成したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルス拡大の影響で移動を伴う研究会は制限されているが、デジタル化された史料を読み、オンラインでの研究会を実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
中村日記のデジタル化に対して、組合リーダーの時代に限定したこと、デジタル化によって東京―大阪の移動研究会については、予定よりも回数が少なくても研究の実施が可能になったことがあげられる。
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