研究課題/領域番号 |
19K02116
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研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
鷹田 佳典 日本赤十字看護大学, さいたま看護学部, 講師 (30634266)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 悲嘆の共同化 / 医療現場と死 / 医療者のサファリング / デスカンファレンス |
研究実績の概要 |
本研究は、医療者参加型遺族会とデスカンファレンスの調査を通じ、医療現場における悲嘆の共同化の可能性と課題を明らかにすることを目的としている。今年度はデスカンファレンスを実施している病院(関東)でのインタビュー調査の実施に向け、作業を行った。具体的には、本病院では毎月1回行われているデスカンファレンスに参加し、参加者のやりとりや場の様子を観察する機会を得た。本カンファレンスは多職種が参加し、各回で取りあげられるケースについて検討がなされる。そこでは、医学的な処置や患者および患者家族への対応に加え、倫理的葛藤を呼び起こすような場面についての率直な話し合いが行われている。また、亡くなった患者についての思い出を共有する場としても機能している。 本年度はこうしたカンファレンスでの観察に基づいて、医療現場における悲嘆の共同化をよみとくヒントが、1)moral injuryへの対応、2)故人との絆の継続にあると考え、関連する文献の検討も合わせて行った。1)moral injuryは戦争帰還兵の研究のなかで提起された概念であるが、Covid19のパンデミックによる医療従事者の苦悩(suffering)を捉えるための概念として再び注目されており、本研究が対象とする悲嘆の共同化について考えるうえでも示唆に富むことが示された。2)故人と絆の継続は死生学の領域で彫琢されてきた概念であるが、本研究では、故人との絆の継続を、個人内的プロセスではなく、死別体験者間で共同で遂行される対人間プロセスとして捉える視点に着目し、カンファレンスでのやり取りを、亡くなった患者との関わり・絆を共同で維持する営みとして位置づける可能性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はデスカンファレンスの参加者へのインタビューを計画していたが、新型コロナウィルス感染症の影響で、カンファレンスが開催されない時期があり、対象者である医療スタッフもコロナ対応で多忙を極めるなか、インタビューを実施することができなかった。ただ、年度の後半からは、再び再開されたカンファレンスに定期的に参加し、次年度のインタビューの実施に向けてスタッフとの関係構築・維持に努めた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はデスカンファレンスに参加する医療スタッフへのインタビューを集中的に行っていく。本カンファレンスは多様な職種が参加しているため、インタビューも特定の職に偏らないよう幅広く実施していきたい。また、医療者参加型遺族会の調査に向け、候補となるフィールドの選定、調査協力依頼を行う。加えて、新型コロナウィルスの感染状況を踏まえ、計画していた海外での資料収集も実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は旅費として60万円、インタビューのテープ起こし代として30万を計上していたが、新型コロナの影響で海外への調査に行くことができず、また、インタビュー調査も実施できなかったため、次年度使用額が生じた。これらについては、次年度、海外での調査とインタビュー調査の実施の際に使用する予定である。
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