研究課題/領域番号 |
19K02124
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石岡 丈昇 日本大学, 文理学部, 教授 (10515472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再居住地 / マニラ / 都市底辺層 |
研究実績の概要 |
本年度はマニラで現地調査をおこない、再居住地に関する基礎データを収集することをおこなった。また、関連する文献(主に英語文献)を収集しながら、グローバルサウスの大都市における都市貧困層と再居住地への移住をめぐる社会学的論点を洗練させるための文献レビューの作業をおこなった。さらに、紛争・災害研究の先行研究も収集しながら、農村からの再居住が土地の喪失という論点から議論されてきたのに対し、都市からの再居住が仕事や社会的ネットワークや情報など「社会生活の総体」からの放出という事態を招く点について、分析観点を鍛え上げた。 また、社会経済的条件のみならず、日常感覚(たとえば再居住地住民が頻繁に口にする「さみしさ」など)に注目することで、昨今の社会学や人類学において発展されてきているsensory studiesの成果も取り入れることが可能な点も確認することができた。 あわせて、新聞やインターネット記事、当事者のブログなど、各種の二次資料の収集にも努めた。さらに歴史資料も収集して、今日の再居住地が、1960~70年代の再居住とはいかなる点において異なるものであるのかを把握しようと努めた。 こうした作業は、本プロジェクトが今年は初年度であったこともあり、いまだ基礎的、前提的な分析段階のものではあるが、雑誌論文や著書の刊行においても、その一部を含めて発表することができた。2021年度は、新型コロナウイルス のパンデミックにより、現地調査が実施できないかもしれないという点を危惧しているが、引き続き、二次資料の収集はおこないつつ、分析観点を洗練する作業を継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査を実施し、基礎データの取得も進んでおり、さらにその一部をすでに成果として公刊することもできている。具体的な成果としては、業績欄に記載の通り、雑誌論文2本、図書(編著および共著)2冊、国際学会1件、国内学会2件(うち一件は招待講演)を刊行している。さらに、現地調査での基礎データの取得についても、フィリピン側のNGOの協力もあり、事前に想定していた以上の量のものを入手できている。以上の点から、「おおむね順調に進展している」という区分が適切に思われる。
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今後の研究の推進方策 |
すでに記したように、本プロジェクトは順調に進んでいる。だが、パンデミックによって現地調査が実施不可能になる点を危惧している。その場合、オンラインで調査を実施することを考えなければならないが、そのための技術的な課題をクリアすることが重要になる。よって、このオンライン調査の実施方法について十分に検討することで、このパンデミックの危機においても研究を一定程度推進することができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月以降に実施予定だった研究会参加および現地調査の実施が、パンデミックにより不可能になったため。この調査費用をめぐっては、2020年度の後半に予定している現地調査で使用する予定である。
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