本研究は、フィリピン・マニラにおける都市貧困層の再居住地のフィールドワークを通じて、フィリピンにおける新たな貧困集積の形態を捉える試みであった。この研究課題に関して、大きく二つの成果を上げることができた。第一に、再居住地をめぐる基礎資料を作成することができた点である。調査地であるR地区の事例調査に加えて、別のJ地区でも補助調査をおこなうことができ、その結果、R地区の特徴をより明確に把握することができた。第二に、再居住地での家族生活をめぐる動態を考察できた。再居住地では、世帯分離を余儀なくされることによって、かつて以上に経済的負担がかかるほか、社会関係も分散することが分析された。
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