研究課題/領域番号 |
19K02132
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
小野寺 理佳 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (80185660)
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研究分担者 |
梶井 祥子 札幌大谷大学, 社会学部, 教授 (90369249)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 世代間関係 / 祖父母 / 孫 |
研究実績の概要 |
本研究は、離婚や再婚の増加とそれに伴う世代間関係の多様化のなかで、「交替居住(親の離婚後、未成年子が定期的に父あるいは母のもとで一定期間暮らすこと)を経験した孫世代」が世代間支援をめぐる祖父母・孫関係をいかに主体的・選好的に築こうとしてきたのかを明らかにすることを目的としている。2020年度は、『スウェーデンにおける「交替居住する孫世代」が築く世代間支援関係に関する研究』の1年目として、エステルスンド市とストックホルム市での調査を計画した。主には、親の離婚を経験した若い世代を対象とするインタビューを行い、交替居住する孫世代が祖父母世代との関係を主体的・選好的に築いている実態をとらえることを目指した。そのために、2019年度より、現地の研究協力者を通してインタビューへの協力者確保を進め、コミューンの家族福祉担当部署の職員へのインタビューの依頼交渉も行ってきた。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大のためスウェーデンへの渡航を断念せざるをえず、一部webでの回答を得るべく模索したが、現地の事情によりかなわなかったため、海外調査が不可能となった。また、2019年度より行ってきた国内調査(インタビュー)の継続実施も困難な状況であった。そこで、2020年度は過去のスウェーデン調査のデータの整理と再分析を進め、祖父母世代の視点からみた交替居住について改めて検討し、まとめを行うとともに、来年度以降に延期したスウェーデン調査の準備の充実をはかった。必要な文献や資料を収集し検討を行い、さらに、インタビューでの質問リストの加筆修正を行い、新型コロナウィルス感染拡大という特殊な状況が交替居住する孫と祖父母の関係にどのような影響をもたらしているのかを明らかにするための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
家族の多様化に関する研究に比して、それに呼応した世代間関係の多様化に焦点を当てる研究の蓄積は少ない。親の離婚や再婚による家族関係と世代間関係の再構築について、これまで研究代表者は、祖父母世代が「多世代の紐帯としての働き」を主体的・選好的に成していることを明らかにしてきたが、孫世代の主体性・選好性については未解明のままであることから、本研究は、そこに焦点を当てることとした。2020年度は、予定していたスウェーデン調査が新型コロナウィルス感染拡大状況において不可能となり、一部webでの調査を模索したがそれもかなわず、また、国内調査(インタビュー)を実施することも困難であったため、調査データを得ることができなかった。その結果、過去のスウェーデン調査のデータの整理と再分析および文献検討など今後の調査研究の準備をするにとどまらざるをえなかった。まず、祖父母世代の視点からみた交替居住について改めて整理した結果、祖父母は、交替居住する孫や共同監護する孫の両親のために新たなネットワークの創造という重要な働きを成すことに自信と誇りをもちながらも、個人の自立・自己決定という価値と、家族を第一に考えるメンタリティとの間で葛藤し、世代間支援によって高齢期における孤独・孤立を回避しようという戦略的な思考もあるなど、複雑な思いを抱えていることが明らかになった。また、先行研究の検討からは、交替居住が孫の世代間交流や孫の発達・幸福感にもたらす影響、離別に際しての両親の諍いの程度や両親の教育水準が交替居住する孫にもたらす影響などについての知見を得ることができた。このように、データ分析のための視角を精緻化することができたことから、来年度以降主に海外調査の実施が可能になれば、これらの知見を活かした調査を行ない、研究の遅れを取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は2020年度に予定されていた『スウェーデンにおける「交替居住する孫世代」が築く世代間支援関係に関する研究』として、エステルスンドとストックホルムでの調査を計画し、中断している国内調査も実施することを予定している。2020年度に予定されていた調査計画も併せて実施できるよう、十分な渡航期間の確保に向けて調整する。スウェーデン調査として、当初はエステルスンド市のみを調査対象地としていたが、大都市圏ストックホルム市での調査も加えることとしている。調査の軸となるのは、親の離別を経験した若い世代(祖父母からみた孫)を対象とするインタビューであり、交替居住の有無、交替居住の取決め内容と実際、祖父母からの支援などを問い、親の離別が子ども自身のネットワークや家族関係意識にどのような影響を与えたのかを明らかし、交替居住する孫世代が祖父母世代との関係を主体的・選好的に築いている実態をとらえることを目指している。この他、親の離別を経験した子ども対象のサポートプログラムを利用している保護者へのインタビュー、コミューンの子ども福祉・家族福祉担当職員へのインタビューの準備を進めている。しかし、新型コロナウィルス感染が収束に向かっているとはいえない状況において、入国・出国の制限が続いていたり、調査対象者や調査協力者の安心・安全を保障できる環境での調査実施可能性の低さが確実に予想されたりする場合には、2021年度も、スウェーデン調査と国内調査について、その中止を検討する。その場合は、現地へ渡航してのスウェーデン調査については2022年度に実施できるよう調整を続け、2021年度においては、過去データの再分析、文献や情報の収集を行いながら、新型コロナ感染状況下でも実施可能な(対象者確保や調査方法の点で)調査のあり方を探り、一部だけでも調査を行ない、少しでも研究を進めたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、予定していたスウェーデン調査『スウェーデンにおける「交替居住する孫世代」が築く世代間支援関係に関する研究』の実施が新型コロナウィルス感染拡大状況において不可能となり、国内調査『「交替居住する孫世代」が築く世代間支援関係の日本的特質に関する研究』(インタビュー)を実施することも困難であったため、すべての調査について実施を断念せざるをえない事態となった。また、調査準備のための分担者との打合せを対面で行うこともかなわなかった。その結果、海外調査、国内調査、打合せ会議のための旅費、海外調査に関わる通訳や翻訳など現地協力者への謝金など、調査実施に充てられていた費用を使用することができなかった。2021年度は、2020年度に予定されていたスウェーデンのエステルスンドおよびストックホルムでの調査実施を計画しており、中断している国内調査も再開することを予定している。2020年度に予定されていた調査計画も併せて実施できるよう、旅費を有効に使用するべく、適切な渡航時期を検討し、十分な渡航期間の確保に向けて調整したい。
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