研究課題/領域番号 |
19K02135
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
下夷 美幸 放送大学, 教養学部, 教授 (50277894)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 離婚 / 父親 / 扶養 |
研究実績の概要 |
離婚後も親は子を扶養する義務を負うが、子どもと離別した父親の多くが養育費を支払っていない現実がある。「養育費の確保」は、政府の「子どもの貧困対策」にも位置づけられているが、その施策は相談支援にとどまっており、実効性に乏しい。諸外国では行政による養育費の徴収制度が実施されており、日本でも同種の制度導入が求められているが、それにはまず、支払い側である父親の生活実態や扶養意識に関する実証的な研究が不可欠である。しかし、現在、この分野で利用しうる先行研究は存在しない。 そこで本研究では、離婚後、子と離別した父親を対象に社会調査を実施し、父親の生活実態と扶養意識の詳細を把握し、彼らの実像を明らかにすることを目的としている。この目的に即して、研究初年度である本年度は、父親の生活実態と扶養意識の現況を広範に把握するため、離別した子がいる離婚男性(年齢は20代から60代、居住地は全国、離婚経験1回、前妻との間に未成年子がいる、子の親権者は前妻)を対象にアンケート調査を実施した。アンケートは委託した調査会社が、個人情報保護法等の関係法令遵守のもと、登録モニターに対してオンラインで行い、448名から回答を得た。回答者の年齢は、30代以下が21.9%、40代が48.0%、50代以上が30.1%であった。居住地域は、北海道・東北地方が6.9%、関東地方が60.7%、中部地方が8.8%、近畿地方が12.7%、中国・四国地方が4.8%、九州地方が5.8%であった。得られたデータの分析から、離婚後、子と離別した父親に関する全体的な状況として、1)離婚の経緯、2)離別した子との関係、3)離別した子に対する扶養意識、4)現在の生活状況を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度と次年度の調査研究を連携させて行うよう計画を立て、より見通しのつく研究の進行が可能となった。今年度予定していた調査を順調に遂行することができ、次年度の調査につながる研究成果を得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により、離婚後、子と離別した父親に関する全体的な状況として、1)離婚の経緯、2)離別した子との関係、3)離別した子に対する扶養意識、4)現在の生活状況を明らかにすることができた。その知見を踏まえ、今後の研究では、さらに詳細に父親側の実情を把握し、養育費の支払い義務を負う父親の生活実態と扶養意識の分析を深めていく。 そこで次年度は、今年度のアンケート回答者のうち首都圏在住者、すなわち、離別した子がいる離婚男性(年齢は20代から60代、居住地は首都圏、離婚経験1回、前妻との間に未成年子がいる、子の親権者は前妻)でさらなる調査に協力意向を表明した者に対し、インタビュー調査を行う。具体的には、1)離婚の経緯(離婚後の子の生活に関する協議等)、2)離別した子との関係(養育費および面会交流の取決めと履行の状況等)、3)離別した子に対する扶養意識(離婚後の子に対する扶養義務の認識および養育費の支払い意向等)、4)現在の生活状況(再婚等を含めた新たな家族関係および家計状況等)について、相手方の同意を得たうえで、デプスインタビューを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を高めるため、本年度と来年度の調査研究を連携させ、本年度の調査はオンラインでアンケート調査を実施し、その成果を踏まえて、次年度に詳細なインタビュー調査を行うこととしたため、次年度使用額が生じた。 次年度は、本年度のアンケート調査で次年度のインタビュー調査への協力意向を表明した首都圏居住の回答者を対象に、相手方の同意を得て、デプスインタビューを行う予定である。その調査経費に、次年度使用額と翌年度分として請求した助成金をあわせて使用する計画である。
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