研究課題/領域番号 |
19K02137
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
大野 俊 清泉女子大学, 文学部, 教授 (10448409)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 介護移民 / 市民権 / 外国人 / 社会統合 / 定着 / 家族帯同 |
研究実績の概要 |
2019年度の主なフィールドワークは、中国における介護労働者の実情を知るため、9月8日から6日間、北京市と河北省で実施した現地調査である。中国語の通訳同行のもと、高齢者介護施設、介護士養成研修機関、海外人材派遣会社、清華大学高齢者労連研究センターなどを訪問し、情報収集や意見交換をした。この調査の前には、中国における高齢者介護関連の人脈形成を兼ねて、8月17日に山東省で開催された「山東省トーア国際フォーラム」(中国老年保健医学研究会主催)に参加し、「超高齢社会・日本の介護人材と介護移民受入れの現状」というテーマで発表をした(パワーポイントは中国語で作成)。 中国における調査の研究成果は、2020年度中に論文として発表予定である。 日本国内では、6月15日に上記大学で開催の社会人向け講座で「多様化する<介護移民>―増え続ける外国人の日本労働市場参入で変わる介護現場」という題目で研究成果を発表した。また、日本移民学会の学術誌『移民研究年報』25号(2019年6月刊行)で「日本定住化が進む『介護移民』―経済連携協定(EPA)での受入れ開始から10年目の現状と課題」との論考を発表した。 これまでの調査の知見は、モデレーターとして参加した国際シンポジウム「日本の介護・アジアのKaigo」(7月7日、長崎大学が福岡市で主催)や、討論子として参加した公開シンポジウム「日・尼EPA看護師の10年間を回顧する」(11月17日、筑波大学人文社会科学研究科が東京都文京区で主催)での発言でも活かした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染は2020年2月以降、世界的な拡大をみせた。これに伴う外出自粛や海外渡航制限が強化されるなか、これ以降に予定していた国内外でのフィールドワークが実施できなくなったことが、研究の遅れにつながった。 技能実習生の介護分野でも日本への送り出しが増加傾向にあったベトナムでは3月初めに1週間程度の現地調査の計画を立て、2月初めには都内において関係者からの聴き取りを実施したうえ、ハノイで渡日予定の「介護移民」に関する調査のため多方面のアポイントメントもとった。しかし、そのさなかに感染拡大でベトナムでも外国人の入国規制など厳しい防疫措置を導入したため、ベトナム訪問はキャンセルせざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大は2020年3月初旬に「パンデミック」に発展し、世界各国が出入国を厳しく制限する「世界同時鎖国」の状態になった。4月7日に日本の首都圏などには緊急事態宣言が出されたが、それが約50日間も続いた。当初予定していたオーストラリアにおける介護移民を取り巻く調査も、同国政府の厳しい外国人入国制限が長引き、2020年度前半、あるいはそれ以降も実施が困難な情勢である。 この世界的出来事は、日本の介護移民を取り巻く環境にも大きな変化をもたらしているとみられたため、4月初旬に京都で京都大学東南アジア地域研究研究所のケアを専門とする教員と打ち合わせ会合を持ち、コロナ禍での新たな角度からの共同研究について協議した。その後も研究代表者が住む東京都の住民は都外への移動自粛が求められ、6月下旬になっても、当初計画のフィールドワークは実施できないでいる。 日本国内での移動自粛が緩和される6月下旬以降は、日本国内における介護移民、介護施設、介護研究実施機関、人材派遣会社などを対象とする調査が中心となり、それも感染が警戒される状況が続く場合にはSkype、Zoomなどオンラインも駆使しての調査を予定している。感染が収まり、国際移動が可能になった暁には、日本に介護労働者を送り出すベトナム、ミャンマー、フィリピンなどでの現地調査も計画する。 また、2019年度に北京などで実施した面談調査を踏まえた論文を執筆のため、関連する中国語文献の検索を続け、重要な文献については介護について詳しい中国人に依頼して和文への翻訳作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月以降、新型コロナウイルスの感染が国内外で拡大し、当初予定していた国内外でのフィールドワーク調査が不可能になったため。
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