新型コロナウイルスのパンデミック化に伴って、当初計画した海外でのフィールドワークは十分に実施できない状態が続いたが、その沈静化に伴い、2022年9月のフィリピン・マニラ首都圏での調査に続き、2023年3月にはベトナム・ハノイとその周辺で、介護労働者の日本送り出し、日本から帰国した人たちの実情などについて調査を実施した。2023年度は、2019年度から実施の調査データを精査・分析したうえで、国内外での学会で研究成果の発表をしたほか、研究代表者が所属する清泉女子大学大学主催の講演会(2023年11月)等を通して学生ほか一般市民にも研究成果を還元した。研究代表者(大野俊)が研究成果を発表した第8回ASEAN日本学会大会(2023年12月下旬)の開催地であるタイ・チェンマイ市には、日本の介護施設などに卒業生を送り出す介護専門学校があり、その学校での教育事情、日本人高齢者向け介護施設などに関するフィールドワークも実施し、タイから日本に向かう介護労働者の意識や日本定着の傾向などについても調べた。 学術的成果は、研究代表者や研究分担者(比留間洋一)が日本保健医療社会学会大会等等で計九回、単独・共同で発表した。日本移民学会大会ではラウンドテーブルを組織し、その趣旨説明とともに、国内外の「介護移民」の市民権に焦点をあてて提言を行った。研究代表者が国内外で実施した調査をもとに2023年度に発表した学術論文は、以下の2点である(後述)。 1)「コロナ下における『介護留学生』の生活と健康―日本福祉教育専門学校の留学生を対象とした配布票調査から―」(齊藤美由紀との共著、『敬心・研究ジャーナル』第7巻第2号:21-31) 2)「ハワイの高齢者介護を支えるフィリピン人移民―『オーナー居宅ケアホーム』を営む女性たちのライフ・ヒストリー―」(『清泉女子大学人文科学研究所紀要』第45号:128-146)
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