コロナ禍により、本研究では調査を基礎としたものであるため、何とか実施できる方向を探ったが、海外への渡航ははるかに困難で、研究遂行は一時的に断念せざるを得ないこととなった。資金面でも、渡航費の極端な増大のため、計画遂行の範囲を制限せざるを得ない状況であった。コロナ禍で、現地の協力者とメールでの連絡も途切れがちとなった。これらの状況下で、過去の調査結果の分析と関連文献・資料研究を行ったりして、何とか研究を進めた。 日本の調査研究から、林業就労には技術習得が重要なポイントであるため、技術教育を行っている教育訓練機関への調査が欠かせないことから、日本、ヨーロッパの職業教育、林業技術教育に関する文献・資料研究を行った。日本では、職業教育は一般教育(高等教育)と成人教育の2つの方法が実施されており、このことは他国でも同様である。ドイツ語圏のような、マイスター制を持つ職業訓練制度と日本の職業高校が異なることは、すでに研究成果を出したが、日本と同様の職業高校制度をもつイタリアは、スイスやオーストリアと国境を接しており、また、北東部にドイツ語圏(南チロル、ボルツァーノ県)を有している。EUの教育制度改革はイタリアの職業教育にも影響を及ぼしており、林業教育も多くは農業教育などの中で行われていた。イタリアのボルツァーノ県の隣県の調査では、大学等の高等教育を受けた林業女性がほとんどであったことから、最終年度はボルツァーノ県で多様な林業労働者に調査を行った。 成果の報告は、過去の調査、日本の調査の報告を中心に日本の学会で発表したが、最終年度は、ヨーロッパ農村社会学会で報告した。ヨーロッパ農村社会学会での林業女性の報告はほとんどなかったことから、一定の意義は見いだせたと考えられる。ヨーロッパの農場には森林が付属しており、その場合、林業を男性、農業は女性といった役割分担のジェンダーがみられたのも興味深い。
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