研究課題/領域番号 |
19K02146
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中西 典子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90284380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地方分権 / ローカリズム / 地方自治体 / 団体自治 / 住民自治 / 地域社会 / 公共的課題 |
研究実績の概要 |
本研究は、中央集権から地方分権への実現可能性を考察するにあたり、主に英国で導入されてきたローカリズム政策に着目し、その政策的経緯と内実、社会的評価の分析を通じて、中央政府から地方自治体への分権化と地方自治体から地域コミュニティへの分権化、という二重の意味での分権政策にみられる積極面と消極面を明らかにするとともに、かかる英国の事例に照らして、日本の地方分権政策における中央と地方の政府間関係および都市と農村の地域間関係を批判的に検証し、地方自治体および地域コミュニティへの権限付与の有効性や地域社会の公共的課題への対応可能性について明らかにしていくことを目的としている。 本研究目的を遂行するために、まず2019年度においては、英国のローカリズム政策の背景とその内実について、英国の政策文書や学術文献のサーヴェイを通じて把握した。ローカリズム政策は、2011年に成立したローカリズム法に基づく政策として、当時の保守党・自由民主党連立政権の下で実施された。ローカリズム政策を把握するにあたっては、地方自治体の権限に関する団体自治と地域社会の権限に関する住民自治という二重の意味での自治という観点を重視する必要がある。また、ローカリズムについては、オールド・ローカリズムとニュー・ローカリズムとに大別されるが、中央政府と地方自治体という政府間関係における分権を主眼とする前者に対し、かかる政治的分権に加えて、あるいはそれ以上に、地域コミュニティへの分権化という視点を強調する後者への比重が高まってきている。このニュー・ローカリズムは、かつてニュー・レーバーといわれた労働党政権において提起され、いわゆるローカル・ガバナンスとしての新たな潮流をもたらしたが、その後の連立政権や保守党政権でも、かかるガバナンスは、緊縮財政の小さな政府を下支えする有効な手法として継承されることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度である2019年度は、当初の研究計画に基づき、英国のローカリズム政策に関する文献調査に加えて、夏期休暇中にはロンドンでの現地調査を実施し、地域の実情把握や地方自治体職員へのヒアリング調査等を開始することができたという点で、おおむね順調なスタートを切れた。ただ、調査を行った2019年8月時点での英国は、ブレグジット(欧州連合離脱)一色であり、ローカル・ガバナンスについてはほとんど影を潜めている状況であった。また、元ロンドン市長で保守党のボリス・ジョンソンが新たに首相になった直後で、現地ではジョンソン氏の評価が高いこともあり、ローカリズムよりもナショナリズムへの期待が高まっていることが、本研究の意図に反するものであったが、同時に新たな研究関心を呼び起こすものでもあった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究計画として、英国のローカリズム政策に関する実情や社会的評価について、引き続き現地調査を通じて明らかにしていくことを想定しているが、目下、世界的に拡大している新型コロナウィルスの感染によって、当面は英国での調査は困難な状況にある。したがって、英国での現地調査は、状況によっては2021年度に実施することとし、2020年度については、英国のローカリズム政策の比較材料としていた日本の地方分権政策に焦点をあてながら、主に文献研究を進めることとする。ここでは、従来の「地方分権」をめぐる論議の経緯を明らかにするなかで、中央と地方の政府間関係(団体自治の局面)および地方自治体から地域コミュニティへの権限付与(住民自治の局面)の動向を把握し、地域社会の公共的課題への対応可能性について考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、会計事務処理の都合上、次年度での会計処理となったものである。
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