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2019 年度 実施状況報告書

収容経験から見る日本における難民認定申請者の処遇

研究課題

研究課題/領域番号 19K02149
研究機関大阪経済法科大学

研究代表者

呉 泰成  大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00795528)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード収容 / 難民認定申請者 / 仮放免 / 韓国 / 長期滞在 / 外国人 / 移民 / 被収容者
研究実績の概要

今年度は、東日本入国管理センター(牛久入管)と東京出入国在留管理局(品川入管)における被収容者の面会調査、被収容者の支援団体への聞き取り、そして被収容者の処遇や長期収容問題に関して開かれたセミナーに参加して、収容問題に関連する情報を収集した。他方で、東アジア文脈のなかで、収容問題の位置づけを明らかにすべく、韓国における収容状況、被収容者の処遇、難民認定申請者の法的地位などに関する資料収集、支援団体関係者の聞き取りなどを行った。その結果、以下の点を明らかにすることができた。
1. 以前行った牛久入管の被収容者の調査結果に、今年度に行った面会調査などを加えて「東日本入国管理センターにおける被収容者の実態:2018年の『牛久調査』の分析を通じて」という論文を発表した。248人の被収容者の分析で明らかになったのは、収容期間が1年半から2年未満の人が全体の27%で最も多く、3年以上も10%を占めていたことである。特に、被収容者のなかでは、日本滞在歴が20年を超えている人が71人(28.6%)と最も多かった。そのことから滞在が長期化している外国人は、日本語を習得し、社会に馴染んでいくことで「統合」されていくと想定されていたが、その反面、常に「収容可能性」を持っている点、そして収容そのものが、国籍を基準にして常に日本人と外国人の境界を作る機能を果たしている点が明らかになった。
2. 韓国の収容に関する資料収集、聞き取り調査をもとに、「日韓における難民申請者等への対応:法的地位と公的支援を中心に」という研究ノートを発表した。日本と比較して韓国での特徴は、長期収容と難民認定申請者の収容が極めて少ないという点である。これには、韓国では、非正規滞在者に対して日本のような在留特別許可で個別的に合法化させるのではなく、集団的に合法化させてきた経緯が関連している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度には、入管収容施設において大きな変化があった。すなわち、長期収容に対抗すべくハンストが行われていたこと、継続的に面会を行ってきた被収容者が予告なしで強制帰国させられたこと、そして新型コロナウィルスの影響で2020年4月末から面会が禁止されたことである。
また新型コロナウィルスの影響により、2020年2月以降に予定されていた多くの日程がキャンセル、または延期となった。具体的に言うと、大村入国管理センター(大村入管)での面会調査、大村入管の被収容者支援団体への聞き取り調査、そして韓国で開催予定であった収容施設に関する日韓ワークショップである。
このような予期していない出来事があったが、日本の収容施設に関する歴史構造的な特徴を把握すべく幅広く資料、文献収集ができ、これまで行ってきた面会調査を踏まえてデータをまとめることができた。また韓国における収容施設の特徴を資料や聞き取り調査から把握することができ、それを研究ノートとしてまとめることができた。まだ収容経験の当事者への本格的な聞き取り調査は行っていないが、おおむね順調に研究は進んでいると言える。

今後の研究の推進方策

今後の研究に向けて、以下の2つのことに重点を置きながら進めていきたい。
1. 収容経験を持つ当事者への聞き取り調査である。引き続き牛久入管と品川入管の面会調査を行っていく予定であるが、とりわけ、これからの研究では、難民認定申請者を含め当事者、その家族の生活、日常の経験に焦点を当てて調査を行っていく。地域のなかに居住する彼・彼女らへの調査から、収容と仮放免がもたらす生活上の影響、そして様々な困難を乗り越えるために、当事者のネットワーク、社会関係、エスニック・コミュニティなどがどのように関係しているのかを明らかにしていく。多様な背景を持つ当事者のなかで、とりあえず、埼玉県蕨市、川口市を中心に集住しているトルコ国籍のクルド人を主な調査対象にしていくが、入管収容施設での面会、支援団体の聞き取りを参考にしながら、クルド人以外の出身者や女性などを視野に入れて調査対象を広げることにも心掛ける。
2. 日韓を中心とする東アジアの文脈における外国人収容、難民申請者の処遇を多面的に把握すべく、欧米諸国での現状や社会的文脈を明らかにしていく。そのために、関連資料、文献収集を行い、最終的に難民認定申請者や非正規滞在者に関する収容問題の国際比較を行いたい。これまで被収容者や収容施設における処遇などに関しては、イギリス、オーストラリアなど一部の国の事例しか分析されてこなかった。他方で、世界的に自国中心主義、排外主義が高まり、難民認定申請者や非正規滞在者に対する取締り、収容、退去強制などが強まる傾向がある今日において、東アジアでは、欧米諸国に比べてどのような特徴が見い出せるかという点を明らかにしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナウィルスの影響で、2020年2月以降に予定されていた国内出張、国内調査、韓国への海外出張がキャンセル、または延期となったからである。コロナの影響が収束した後に、予定していた調査、出張を行う予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 東日本入国管理センターにおける被収容者の実態:2018年の「牛久調査」の分析を通じて2020

    • 著者名/発表者名
      呉泰成
    • 雑誌名

      アジア太平洋研究センター年報

      巻: 17 ページ: 2-12

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日韓における難民申請者等への対応:法的地位と公的支援を中心に2020

    • 著者名/発表者名
      呉泰成
    • 雑誌名

      東アジア研究

      巻: 73 ページ: 47-64

    • オープンアクセス
  • [備考] 東日本入国管理センターにおける被収容者の実態:2018年の「牛久調査」の分析を通じて

    • URL

      https://www.keiho-u.ac.jp/research/asia-pacific/pdf/publication_2020-01.pdf

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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