研究課題/領域番号 |
19K02149
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
呉 泰成 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00795528)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 難民 / 人道的特別滞在措置 / 入管法 / 韓国 / アフガニスタン |
研究実績の概要 |
収容、難民問題に関連して日本と類似的な状況である韓国の動向を注目してきた。現在、韓国でも難民法改正の動きがあり、またミャンマー、アフガニスタン、ウクライナにおける政変、戦争に伴って人々の流入が起きている。これらの動向を『難民研究ジャーナル』12号において「2021年難民動向分析:韓国」としてまとめた。 韓国では2021年以降、ミャンマー人、アフガニスタン人、ウクライナ人に対して「人道的特別滞在措置」を取り、一時的に滞在・就労を認めている。しかしこの措置は、本国の情勢が安定すれば、帰国することを前提にしているもので、将来的に韓国に定住することを想定しない。他方でタリバンによる首都カブール陥落に伴い、大使館、病院など韓国関連の機関で勤めていたアフガニスタン人を「特別寄与者」として、「人道的特別滞在措置」とは異なる扱いで受け入れており、そのために、関連法規(出入国管理法施行令、在韓外国人処遇基本法)の改正を行っている。2021年12月に国会に提出された難民法改正案は、現在審議中であるが、日本の入管法改正案と同じく、難民認定手続き、認定基準を強化・制限する動きである。これらの点から引き続き両国の動向に注視していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、聞き取り調査に向けて以前から支援団体(牛久入管で面会活動を行っている団体と、埼玉県川口・蕨市で地域のトルコ国籍のクルド人の支援する団体)の定例会や日本語教室に断続的に参加しており、収容、地域の難民申請者を取り巻く動向を把握している。コロナ禍で収容施設から仮放免で外部に出ている者が多く、また入管法改正の動きのなかで、生活がより不安定になっており、経済的な困窮さは増している。仮放免者への聞き取り調査は、様々な形で試みているが、思うように調査は進まず、本格的な調査にはまだ至っていない。 他方で、コロナ禍で韓国での現地調査はしばらく行ってないが、収容者の面会、難民支援を行っている団体、弁護士との連絡は取っており、法改正の動きや現状などは把握している。今年の夏に、韓国における難民認定者に関する聞き取り調査を行う予定であり、それに向けて現在準備を進めている。 今年3月には、大村入管、大阪入管を訪問することができ、被収容者の面会やこれらの地域で面会や難民支援活動を行う団体の関係者、当事者の聞き取りを行った。3月の大阪の訪問の際には、過去に仮放免を経験していた在日コリアンの聞き取りを進めるべく、知人を通じて調査協力者を探していた。聞き取り調査を行う予定はあったものの、調査協力者の都合でまだ実施はされていないが、近いうちに調査は行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、3つの調査を中心に進めていく。第一に、埼玉県川口・蕨市に集住するクルド人の調査である。現在、調査に向けて支援団体が行っている日本語教室に参加しており、知り合いの家庭を訪問するなど、動向を把握している。親族の流入、難民不認定による仮放免の増加などで、コロナ前に比べて状況は大幅に変化している。これまで先行研究では経済的側面や医療問題などは分析されているものの、収容・送還の可能性、収容経験がもたらす影響などに関してはあまり分析されてないので、これらの調査ができるように進めたい。 第二に、韓国における難民申請者の聞き取りである。日本と同じく韓国でも近年難民申請者が増加しているが、認定者数は依然として少数である。その結果、多数が再申請を含む難民申請者という地位に置かれている。日本では難民不認定で、再申請を行う者を「送還忌避者」とみなし、送還を可能にする動きがあるが、韓国ではどのように対応しているのかを明らかにしたい。 第三に、在日コリアンの仮放免経験に関する調査である。現在、コロナ禍で入管施設の被収容者の多くは、仮放免者として滞在しており、出頭、移動制限、就労禁止、保険適用外など制約を受けて生活を余儀なくされている。この仮放免者の処遇は、歴史的な観点から分析するとどのようにとらえることができるのか。すなわち、1950~80年代における在日コリアンの仮放免者の経験との関係性を明らかにしたい。これまで在日コリアンの先行研究では、法的地位、世代交代、社会運動などに関する内容が多数を占め、大村収容所、在留特別許可に関しても一定の蓄積がある。しかし、仮放免者に関する分析はほとんど行われていない。現在の仮放免制度の問題を考える上で、過去の在日コリアンの仮放免者の経験は、示唆する点が多く、重要だと考えるので、調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、国内調査と韓国への海外調査ができなかったので、使用予定の旅費、人件費・謝金が使用できなかった。現在コロナが収まったので、今年の夏と来年の春を利用してこれまでできなかった現地調査を行う予定である。
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