研究課題/領域番号 |
19K02150
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
帯谷 博明 甲南大学, 文学部, 教授 (70366946)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水環境 / ガバナンス / ソーシャル・キャピタル / 河川行政 / 内容分析 |
研究実績の概要 |
本年度は、コロナ禍で対面でのインタビュー調査が進められなかったものの、①ガバナンス論を中心に、河川・環境政策および市民セクター・社会運動に関する関連研究のレビューと整理を進めるとともに、②現役官僚が水環境の政策課題について執筆する月刊雑誌『河川』等を対象に、1990年代後半以降の記事を入手し、データの検討と内容分析を開始した。具体的には、記事タイトルから政策課題を抽出・分類し長期的な傾向を把握した上で、「環境」や「市民参加」、「災害」などの政策課題ごとに記事を選定し、内容分析を進めた。 これらの作業を踏まえて、得られたおもな知見は次の3点である。 第一に,「災害対策」は従来からの河川行政の主目的であったが,1990年代後半から2000年代半ば頃にかけては「環境保全」や「改革」「参加・連携」などテーマ(施策)の多様化が見られた。 第二に,「災害対策」が全面化しテーマの多様性が失われるのは2010年代のことであるが,それは東日本大震災の発生により突然生じたものではなく,2000年代から「災害対策」へのシフトは徐々に始まっていたのであり,その「前史」と連続的に捉えるべきである。また,この時期,特集テーマおよび予算方針のいずれにおいても,「『災害対策』への偏重と『環境保全』の相対的な低下」を確認することができる。 第三に,年度予算の「基本方針」や「白書」との対比の結果,雑誌『河川』の特集テーマは時々の河川行政の主要課題や政策関心が反映されるメディアとして,とりわけその変化を通時的に解明するための素材として,一定の有効性を有することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍によりフィールドワーク(インタビュー調査等)は計画通りに進められていないなどの課題はあるものの、研究全体としては、本研究課題の成果として、論文(単著)1点、学会発表(単独)1件に加えて、専門書(単著)1点を当初の計画より前倒しで公刊することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が当面続くことを想定して、対面型のフィールドワークやインタビュー調査ではなく、刊行されている『河川オーラルヒストリー』(2018年10月時点で14冊刊行)から、とくに1990年代以降の河川行政に関連するものを選定し、河川法改正(1997年)を中心に「市民参加」や「環境保全」などの政策課題がどのように位置づけられていたのかを整理する作業へシフトし、その内容分析を着実に展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会大会がすべてオンラインに切り替わるとともに、予定していた現地での対面型のフィールドワークの実施が不可能であったため、旅費の使用額がゼロとなったため。今年度については、テキスト分析用のパソコンやソフト購入などにより、変更後の計画が着実に進められるように執行する予定である。
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