研究課題/領域番号 |
19K02150
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
帯谷 博明 甲南大学, 文学部, 教授 (70366946)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水環境 / ガバナンス / ソーシャル・キャピタル / 河川行政 / 内容分析 / 参加型リサーチ |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に続くコロナ禍により対面でのインタビュー調査は進められなかったものの、①ガバナンス論を中心に、河川・環境政策および市民セクターに関する関連研究のレビューを進めるとともに、②アメリカの社会学者R. Stoecker氏の知見(Stoecker 2013)を中心に、社会学における参加型リサーチに関する理論的・方法論的考察と検討を進めた。これらの作業を踏まえて得られたおもな知見は次の通りである。 Stoecker氏は、リサーチを進める過程の各段階において、コミュニティの人々が主体的に加わることが成功の鍵である、と説く。そのために同氏は<診断・処方・実施・評価>という4つの段階で捉えるモデルを提案している。これが「プロジェクトに基づいた/沿ったアプローチ(project-based approach)」であり、コミュニティの現状や課題解決のプロセスに寄り添った参加型リサーチの方法論である。この4つの段階それぞれにコミュニティの参加をいかに組み込むか。リサーチをこのように捉えることで、プロジェクトに関わる人々が抱えてきた困難や不安が、対処可能な課題群に整理される。 とくにアメリカでは、コミュニティは多様な状況下にあり、郡政府や市町村はコミュニティのカウンターパートとして登場するものの、主要なプレイヤーとして視野に入っているわけではない。国土がいずれかの自治体(市町村)、さらにその下位に町内会・自治会組織とあまねく区切られ、いわば地域生活の所与の前提として存在している日本とは大きな違いがあるものの、コミュニティを組織化し、住民自らが主体的に地域生活をコントロールしていく必要性の大きさが伺われる。「ガバナンス」を考える素地として、具体的な方法論として、プロジェクトベースの参加型リサーチの有効性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論的・方法論的考察は進んでおり、前年度には「水環境ガバナンス」に関する単著(専門書)も刊行できているが、現地調査(含むインタビュー)がコロナ禍で予定通りに進められていないためこのように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
市民活動/NPOのキーパーソンへの聞き取りと資料収集を進め、今日までの活動/運動史の整理を行う。同時に、とくに「市民参加」「環境保全」「防災」などの中央レベルの政策課題の決定と導入が現場にどのように反映され、いかなる影響をもたらしてきたのか、河川環境に関わる市民セクター内および行政セクター(官僚)との社会ネットワークと現場での協働体制の変化に注目しながら、その動態を明らかにする。
2020年度から続くコロナ禍は引き続き予断を許さない状況にあるが、今年度は現地調査を重点的に行うと共に、1年程度の研究期間の延長を想定し、刊行物の内容分析とともに実証データの調査分析方法を再検討し、研究課題の遂行に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により国内外の学会大会がすべてオンラインに切り替わるとともに、予定していた現地での対面型のフィールドワークの実施が困難な状況にあり、旅費の執行がほぼできなかったため。今年度については、テキスト分析用のパソコンやソフト購入などにより、変更後の計画が着実に進められるように執行する予定である。
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