研究課題/領域番号 |
19K02150
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
帯谷 博明 甲南大学, 文学部, 教授 (70366946)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水ガバナンス / 水環境ガバナンス / 流域治水 / 市民参加 / 協働 |
研究実績の概要 |
本年度は、法制度や政策動向と市民活動の調査事例の展開過程を整理するとともに、政策課題による時期区分と事例分析から、「協働」や「参加」がもたらした帰結と課題を明らかにする作業を進めた。気候変動に伴う降水量の増大と水災害の多発・激甚化を背景に、社会資本整備審議会(河川分科会)は2020年に「流域治水」への転換を促す答申を発表した。これを受けて、日本の河川行政は関連法の改正を経て「流域治水」政策(プロジェクト)を導入した。国交省によれば、この政策は従来の河川区域内の対策から転換し、氾濫原を含めた流域全体を対象に、ハード・ソフトを総合的に組み合わせた治水(災害)対策を「流域のみんなで」連携・協働しようとするもので、全国すべての河川において展開・実施されることになっている。全国の一級河川ではそのための多様なメニューを盛り込んだ「流域治水プロジェクト」がすでに策定・公開されており、更新も施されている。
もっとも、1990年代後半以降の河川行政を振り返ると、「市民参加」や「協働」は次第に後景に退き、予算面でも「災害対策」が最優先課題となってきた経緯がある。また、「あらゆる関係者が協働して」「これからは流域のみんなで」という政策スローガンとは裏腹に、計画を検討するために各河川に設置された「流域治水協議会」の大半は、河川管理者に加えて流域の自治体(首長)や関係する行政機関などで構成される、主として行政セクター内の「連絡協議会」に留まっていることが判明した。「流域のみんなで」という理念は、少なくとも現場レベルでは文字通りのスローガンに留まることが懸念される。これらの知見を研究論文としてまとめ公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単年度としては計画以上に進捗したが、複数年におよんだコロナ禍における調査の遅れが影響しているため
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度においては、遅れている関係者への聞き取り調査を計画的に進めていくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって研究課題に関する調査(出張)の計画が変更を余儀なくされたため。次年度は予定している調査(出張)による旅費等において計画的な執行を見込んでいる。
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