(1)従来、「遺伝性疾患」として血友病の症状と遺伝に関わる問題は、「男性」である「血友病患者」と「女性」である「保因者」という性別(セックス)にもとづく非対称な性別問題(ジェンダーの非対称性)として常態化していた。だが、血友病コミュニティの動向を探ると、「血友病患者」概念と「保因者」概念の境界を問い直すかたちで、血友病保因者のケアや支援が推進されていることが明らかとなった。(2)また、血友病をめぐる「薬害」の経験や歴史の共有と継承は、血友病コミュニティ内部にとどまることなく、さまざまな薬害事件に通底する問題を浮き彫りにし、社会に働きかけるという方策を採用していたことが明らかとなった。
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