研究課題/領域番号 |
19K02155
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
松永 友有 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50334082)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イギリス / 通商政策 / 自由貿易 / 関税改革 |
研究実績の概要 |
投稿・査読のプロセスを経て、半世紀近い歴史をもつ国際ジャーナルであるJournal of European Economic Historyに単著論文"Reconsidering the Tariff Reform Controversy in Britain: Joseph Chamberlain's Tariff Reform Versus Arthur Balfour's Plan of Retaliatory Tariffs"が掲載された。本論説は、19世紀から20世紀にかけての世紀転換期の欧米諸国における国民経済の開放性および通商政策と社会政策との関連の解明を目的とする本研究課題に関して、とりわけ通商政策の側面から迫った意義を有するものである。 すなわち、当時の世界経済の中心国であり、世界貿易の中心にあったイギリスにおいて、自由貿易政策の是非を問うた同時代の一大論争を新たな視角から解明した。本論説においては、イギリスの自由貿易政策を有力政治家ジョゼフ・チェンバレンが覆すことに失敗した原因について、従来の通説とは異なる見方を示し、これを各種の一次史料に基づいて実証した。簡潔に言えば、チェンバレンはイギリス本国の産業利害を守るという意図ではなく、自治植民地カナダを本国につなぎとめるという意図を最優先していたため、幅広い支持を得られるような運動を発展させることができなかったのである。 その他、全国学会である西洋史研究会の秋季年次大会の共通論題における基調報告「チェンバレンの、チェンバレンによる、カナダのための計画?-二つの帝国特恵システムとイギリス関税改革運動の帝国ヴィジョン」をおこない、上記の主張を新史料に基づいて立証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
投稿・査読のプロセスを経て、国際ジャーナルであるJournal of European Economic Historyに単著論文"Reconsidering the Tariff Reform Controversy in Britain: Joseph Chamberlain's Tariff Reform Versus Arthur Balfour's Plan of Retaliatory Tariffs"が掲載されたことは重要な研究成果である。本ジャーナルは、1972年に著名な経済史家ピーター・マサイアスなどによって創出された伝統ある国際ジャーナルである。 その他、全国学会である西洋史研究会の年次大会共通論題において、同様なテーマに関する基調報告をおこなったが、これはコメンテータによって高い評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
19世紀から20世紀にかけての世紀転換期に欧米諸国で最初に普及した社会保険制度が国民経済の開放性によってどのように規定されていたのか、という点を解明した英語論文を既に作成済みである。これを定評ある国際ジャーナルに投稿し、掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に引き続き、2021年度においても、新型コロナウイルスの流行にともなう出入国規制により、予定していた史料収集のための海外出張をおこなうことができなかったた。そのため、かなりの額の繰越金が生じた。2022年度に海外調査が可能となった場合は、そのために重点的に助成金を使用する予定である。
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