本研究の核心をなす学術的「問い」は、「日本における医療保険制度の形成と展開において、国際的要因はどのような影響を与えたのか」である。それに対して、「国際関係の構造的変動とその中における日本の立ち位置の変遷が、日本の国家政策全体の変化につながり、その一環として医療保険制度が変化していった」という仮説を最初にたて、今回の研究を始めた。この仮説を検証するために、より具体的に3つのポイントを設定した。ポイント1:1920年代から現在において、国際関係がどのように変動し、その中で日本の位置付がどのように変遷したのか。ポイント2:ポイント1の影響を受け、日本政府がどのような政策転換をしたか。ポイント3:その政策転換全体の中で、医療保険制度はどのように展開したか。今回の研究において、ポイント1と2はほぼ予定通り進めることができ、研究発表や刊行物等で成果を示すこともできた。しかし、ポイント3に関しては、1960年代の国民皆保険制度の成立までは研究発表や刊行物等で成果を示すことができたものの、それ以降、現在におけるまでの医療保険制度に関しては検証を十分に進めることができなかった部分もある。その部分を今後の課題としてさらに研究を進める予定である。 今回の研究によって、外交・国際関係分野と医療保険(社会保険)分野という二つの異なる学問分野を融合することが可能であることが示された。それは内政と外交の包括的理解への 視点を提供することにつながり、新たな学域設定の可能性を秘めているといえる。
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