研究課題/領域番号 |
19K02159
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
嶌末 憲子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80325993)
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研究分担者 |
小嶋 章吾 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (90317644)
坂井 博通 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (60249191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | F-SOAIP / 生活支援記録法 / ミクロ・メゾ・マクロ / IPW / PDCAサイクル / DX / リフレクション / ソーシャルアクション |
研究実績の概要 |
コロナ禍での多面的影響により見直した調査計画は実施できなかったが、前年度までの実績をふまえ、再考した5つの観点(①ICT化・PDCA、②教材・分析、③ミクロ・メゾ・マクロの展開、④普及と社会的評価・政策貢献、⑤フィールド選定)より総括する。 ①F-SOAIP搭載によるICT化は、KCiS(認知症対応型健康管理支援システム)、地域包括ケア関連、地域共生社会に資する自治体対象の「福祉相談支援システム」にて稼働しており、PDCAサイクル促進やデータ利活用に資する分析の可能性を関係者に提案した。前2者は、AMED事業にも採用されている。国公立や地域の先進的病院、グループ病院等の医療機関の導入ニーズも把握し、新たなシステムベンダーに搭載を求めた。 ②動画教材と共に、LIFE(科学的介護情報システム)や学習療法等とケアプランを連動させる質的分析法を提示した。 ③多領域でのF-SOAIP実践報告を通じ、ミクロ・メゾ・マクロの要素を提示した。 ④各種専門雑誌での②の監修、動画教材の作成、自治体・職能団体等へのF-SOAIP研修の実施等により、研究成果の普及に努めた。なお、令和2年度の介護記録法の標準化調査研究(老人保健健康増進等事業)では、F-SOAIPの採用要望が最も多く、項目形式の介護記録法が提案された報告書は、厚労省のHP「介護分野における生産性向上の取り組みを促進するツール」として掲載された。LIFEの収集項目等に係る令和3年度の同事業でも、F-SOAIPの活用例が付記された他、病院機能評価や福祉サービス事業の第三者評価、BCP、医療介護連携やACPへの活用、適切なケアマネジメント、生活困窮や児童虐待予防、多職種によるプラットフォーム等、関連施策へのソーシャルアクションを進めた。⑤調査研究のフィールド選定については、重層的支援体制整備事業のモデル自治体等を候補として調整している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍にて見直した調査計画が実施できていないため、前述の①~⑤別に自己点検した結果をまとめる。 ①~③では、F-SOAIPの社会実装という観点からは、計画以上に進展していると言える。 ④については、F-SOAIPが実践現場に普及していることや、社会的評価を得て幅広く活用されているという観点からは、計画以上の進展と評価できる。他方、F-SOAIPによる実践を社会課題解決に役立つ好事例として発信しても、研究費やテーマ別の縦割り、既定の枠組み等により横展開できない、すなわち政策貢献できない環境にあることが確認された。 F-SOAIPのミクロ・メゾ・マクロ的効果は、現政府や厚生労働省が掲げる課題解決に資するものであるため、児童領域については、厚生労働科学研究費補助金(分担研究者)への参画を通じ、相互に得られた成果を役立てられた。しかし、多領域におけるソーシャルアクションは、ミクロでの段階やメゾ~マクロの展開では、政策反映への要請を受けた。特に、マクロレベルでの社会実装には、F-SOAIPによるイノベーションを可能とすべく、システムベンダーなども当事者とした社会システムの創造が必要であるため、政策関係者へのアプローチが課題となった。 ⑤フィールド選定や調整は2022年度の持ち越さざるを得なかった。今後もCov19等の収束が不透明な状況下においては、フィ―ルドへの負荷が大きいことから、特定の自治体に限定し、多領域におけるミクロ・メゾ・マクロレベルでの成果を実現した導入者等を対象として横断的質問紙調査や、インタビュー調査による後向き調査を中心にすることを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
ミクロ・メゾ・マクロの展開には数年を要することから、事前に継続的調査を計画実施することは困難であるため、既にマクロレベルの展開が把握されている地域の内、Cov19の影響を受けにくい地域にて効果を後ろ向き調査にて確認する。 ①については、F-SOAIPを搭載したICTベンダーと協力して、各システムに合った②を見直すとともに、分析可能な方法をベンダーにも提案する。 ③ミクロ・メゾ・マクロレベルまでの効果を確認した上で、④普及・社会的評価を受けている地域や団体を対象とし、効果と関連した政策について提言を目指す。 これらの条件を満たす⑤フィールド選定により、新型コロナウィルスの影響を最小限にした研究として推進する。 また、ICTベンダーの普及状況や関連政策状況もふまえ、研究方法を前項のように柔軟に見直すとともに、さらに1年間の延長が望ましい。なお、③ミクロ・メゾ・マクロの展開より、検討する「好循環モデル」は、④の最新状況より、導入者に対する質的分析を中心としたリフレクションデータを基にモデル構築することも検討する。さらに、本研究は、ICT化によるデータの利活用が、マクロレベルでの効果を高めるといった仮説により、政策化されても課題を有するLIFEや、求められている認知症ケアや領域を超えた虐待予防等の課題解決のたための理論、アプローチ(学習療法や課題解決のAI化など)に着目し、F-SOAIPを活用して効果を挙げた法人や医療機関、自治体等については、好事例として全国発信できるよう進めていきたい。 以上をふまえ、③と④を中心としながらも①~⑤を統合する観点として、新たに⑥研究手法としてのソーシャルアクションを位置付ける。F-SOAIPの導入によるマクロレベルの諸施策へのイノベーションを合意できるよう、ソーシャルアクションのプロセスを可視化し、モデルとして提示していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を使用できなかった状況は、前述したとおり、コロナ禍において、フィールドの選択・調整や調査ができなかったためである。本研究は、本来Cov19が確認された2020年度に、まず一年延期とし、さらに最終年度に延長申請をすべきであったが、2020年度は教材が完成したばかりで、延長の判断がきなかったため、最終年度における未使用額が大きくなった。 2022年度は、協力先であるフィールドへの負担を軽減でき、柔軟に対応できるよう、インターネットでの質問紙調査の可能性について検討している。また、有識者による専門的知識の提供を受け、質的調査と質問紙調査を進められるよう準備している。
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備考 |
「F-SOAIPのHP」http://seikatsu.care/にて、研究内容又は研究成果が反映されたものとして、成果等を複数紹介している。www.jmar.co.jp/asset/pdf/job/public/llgr2_155_summary.pdf/www.jmar.co.jp/asset/pdf/job/public/llgr2_155_report.pdf/
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